ICU卒業生ら「大学紛争」の時代を多角的に回顧 2025年5月31日

 国際基督教大学(ICU、岩切正一郎学長)は5月23日、キリスト教強調週間にあたる「C-Week」のイベントとして「大学紛争を生きたキリスト者」と題するパネルディスカッションを同大学(東京都三鷹市)で開催した。

 主催は同窓会支部「ICU伝道献身者の会」だが、学生側からの問いかけを発端に、平和を理念とするICUのキャンパスで授業ができなかった「大学紛争(闘争)の時代」を知らない世代と、当時を生きた卒業生の対話を目指して企画されたもの。

 小林宏和氏(42期、日本キリスト教会世田谷千歳教会牧師)と梅津裕美氏(27期、同窓会支部長・日本基督教団荻窪教会牧師)による事前インタビューなど入念な準備を経て、当日は小林氏の司会のもと、菊地純子氏(15期、聖書学者・日本キリスト教会信徒)、松田繁雄氏(17期、日本福音ルーテル教会隠退教師)、鎌野善三氏(17期、関西聖書神学校元校長)の3名がそれぞれの経験と現在の思いを語った後、フロアからの質問に答えた。3名のレジュメと梅津順一氏(14期、前青山学院長)による時代背景を解説した資料はすべてQRコードで提供され、フロアからの質問も同じくQRコードで受け付けられた。

 菊地氏は、当時の状況を「紛争」と呼ぶか「闘争」と呼ぶかは当事者各自で捉え方が異なることを指摘し、また当時の学生が「一丸」ではなかった点を強調。話し合いでの解決に失敗した事実は今も問い続けている宿題であること、関わりが希薄な現代にも「問い」から始めて関わり続ける必要性を語った。

 松田氏は入学後すぐに授業が行われなくなる中、田川建三氏の自主講座「マルコ福音書講義」に参加し、革マル(日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)「オルグ」主導の紛争とは距離を置いて自主的に三里塚闘争に関わるようになる。当時は各自が「立場」を問われ「自己批判」を強要されるも、「立場」を表明できない人が大多数だったことを指摘する。

 鎌野氏は、学生側のバリケードに大学側がジュラルミン(の盾)の壁を築いたことにも、「大衆団交」の態度表明の強要にも反発し、聖書研究会「しゃろうむ」を立ち上げる。大塚久雄氏との出会いにより社会と個人の関わりに目が開かれたことから、対話の重要性を強調した。

 対話を拒絶する暴力のもとでいかに対話を生み出すかが問われる一方、その暴力に暴力装置で対抗したことの是非についても問い続けることは必要であろう。

(報告=河野克也・東京神学大学特任准教授)

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