〝祈り〟と〝デザイン〟が紡ぐ隣人愛のかたち 聖学院中高 宗教文化ゼミがミャンマー支援 2025年7月11日

聖学院中学校高等学校(東京都北区、伊藤大輔校長)のグローバル・イノベーション・クラス(GIC)で宗教文化ゼミに属する高校生が、「innore design(いのりデザイン)」と銘打ったミャンマーへの支援プロジェクトを展開している。互いの文化を理解し、尊重し合い、助け合うドネーション文化の育成と、社会貢献意識を養う機会をつくることを通し、「当事者性をともなった社会」の実現を志す。
父親の仕事の都合で、ミャンマーのインターナショナルスクールに通っていた野中茂壮さんは中心メンバーの1人。中学1年生だった2021年、現地でクーデターを経験し、緊急帰国を余儀なくされ、聖学院中学校に編入した。クラスメートとの会話で同世代の無関心さに危機感を覚え、クーデター前の日常を知ってほしいと仲間と一緒に「Yangonかるたプロジェクト」を開始。自身が撮影した写真でミャンマーのかるた=写真下=を作りたいと、クラウドファンディングで資金を募ったところ目標額を上回る支援が寄せられ、これまで延べ1万2000人以上の若者らに波及し、各地で関連イベントに登壇するなどの実績も積んできた。
2024年、高校2年生4人と野中さんを含む高校1年生4人でスタートした宗教文化ゼミでは、ミャンマーで活動するNPOやNGOと連携し、現地の人々の生活に寄り添った支援を提起。ミャンマーやアフリカの手工芸品を使用したオリジナルの聖書カバーや聖書や賛美歌を持ち運ぶバッグをデザインし、持続的な社会貢献を目指すというもの。今年3月までの6カ月間で12万円以上の収益を上げ、その一部は2025年3月に起きた大地震の被災者にも届けられた。
「innore」は、「innovation」と「re(再起・再生)」を掛け合わせた造語。「イノベーションを通じて誰かの再出発に関わる」「支援の輪に自分も当事者として関わる」との意味が込められている。活動はすべて生徒主体で進められ、商品の企画から現地との連絡、デザイン、販売までを自ら手がけるという。顧問を務める伊藤大輔さん(聖学院中学校高等学校教諭)は、「スクールモットーであるOnly One for Othersを体現するために生徒がチャレンジしている姿はいつも感動的。この活動を通して、祈りの輪に加わる人が起こされることを願っています」と期待を込める。
活動の過程ではOMFインターナショナル(国際福音宣教会)東京事務所を訪れ、代表の佐味湖幸さんの紹介で2人のミャンマー出身者から、祖国の厳しい現実を聞く機会も得た。「自分の意思で進学や仕事を選べない」「学校が再開されず、武力で子どもたちが命を奪われることもある」など、自由や希望を奪われた現実から「国や文化が異なる人々の痛みにどう寄り添えるか」との問いにも直面してきた。
「大好きなミャンマーが忘れられてほしくない」との思いが原動力だと話す野中さん。「活動を続ける中で、支援とは一方的に助けてあげることではなく、自分もいつか助けてもらえる支援の輪の中にいることだと気づきました。支援する側、される側という構図を越え、互いに学び合う関係性を築いていきたい」
今後、現地工房へのスタディツアー、社会問題に関するワークショップ、同じキリスト教学校に通う生徒との交流、啓発イベントなども計画している。
日々、学校で教わる「隣人愛」をどう具現化できるか。国や学校の枠組みを越えた高校生たちの挑戦は続く。(本紙・松谷信司)

保護者会の日にミャンマー地震支援として聖書カバーを販売