改革派神学研修所 夜間信徒講座 「牧師夫人」を問い直す 当事者ら発題 2025年7月21日

日本キリスト改革派教会の有志立牧師養成機関である改革派神学研修所(牧野信成所長)は5月から6月、全5回にわたり「『牧師夫人』!? 教会におけるジェンダー」と題する夜間神学講座をオンラインで開講した。「男性女性を問わず、すべての教会員がそれぞれ自分自身の課題に目を向ける機会」となることを期待して企画されたもの。
各回の発題者とテーマは以下の通り。坂井朋子氏(湘南恩寵教会会員)「『牧師夫人は一信徒』からの解放――賜物の発見・『神の望みと私の願い』」、長谷川はるひ氏(坂戸教会協力牧師)「『構造的差別』という観点から見る『牧師夫人』」、福西裕子氏(神戸改革派神学校非常勤講師「牧会ケア」担当)「期待され排除される牧師夫人」、井上有子氏(長野まきば教会会員)「婦人よ、あなたの信仰は立派だ」。最終回の6月26日には、木村恭子氏(川越教会牧師)の司会のもと4人の発題者を交えたパネルディスカッションも行われた。
長く教えられてきた「牧師夫人は一信徒」という言葉への違和感を吐露した坂井氏は、無意識・無自覚に「牧師夫人」という役割に自身を当てはめていた経験から、「牧師の妻は置かれた特殊性から、ある『役割』が生じるのは否めない」としながらも、「評価される恐れから解放されて、自分自身に与えられた賜物を発見しながら、働きを吟味していく」必要性を説いた。
福西氏は、リア・マラシガン・ダーウィン著『はい、私は牧師夫人』(いのちのことば社、2009年)、窪寺俊之、森田悦弘、久保田拓志著『牧師とその家族のメンタルケア』(いのちのことば社、2010年)の2冊をもとに期待される牧師夫人と、排除される牧師夫人の両側面について検証。教会や教会員個人が、一個人をどう捉えるかに関わる問題であり、「私たちは牧師夫人だけでなく、牧師、牧師の子どもに対して心を向けてきたか」と改めて問いかけた。
パネルディスカッションでは、牧師と結婚して「牧師夫人」になった場合と、結婚した配偶者が後に牧師として献身した場合での召命の違い、「牧師夫人」が無償の奉仕者として扱われがちな構造的問題にも切り込んだ。
長谷川氏は、セルフケアの重要性を実体験に基づき紹介した上で、「牧師夫人」に代わる新たな呼称として「配偶者が牧師の人」を提唱。井上氏は、「牧師夫人」として奉仕してきた先達の貢献に敬意を表することと、家父長制を批判し、構造的な暴力の再生産に歯止めをかけることは別の議論であると前置きした上で、男性中心のこの世と妥協し、バランスを保つのではなく「難しさを承知の上でなお、徹頭徹尾イエス・キリストと共に立つ」フェミニスト神学の立場を強調した。
改革派教会では「牧師夫人」について教会規定でも一切記されておらず、公に議論されるのは稀だが、各回とも約100人の牧師と信徒が参加し、関心の高さをうかがわせた。神学研修所は今秋、50周年の記念講演を予定している。