米スコープス裁判から100年 進化論教えた高校教師をめぐる「世紀の裁判」 2025年7月16日

 1925年7月に米国南部テネシー州の田舎町デイトンで行われた「スコープス裁判」から今月でちょうど100年となる。高校の生物学の授業で進化論を教えた教師が有罪判決を受けた裁判で、20世紀米国の宗教と科学の対立の象徴的事件として今日も語り継がれている。

 舞台となったテネシー州には当時、公立学校で進化論を教えることを禁じる法律(バトラー法)があった。人間がサルから進化したという説が、聖書的な創造論への冒涜とみなされたためだ。これに挑んだのが24歳の生物学教師ジョン・スコープス=写真上=だった。同法の妥当性を社会的に問うべく高校の授業で意図的に進化論を教えて逮捕され、裁判にかけられた。1925年7月10日から21日にかけて行われた同裁判は「サル裁判」と呼ばれ、ラジオで全米に生中継されて注目を浴びた。

 結果的にスコープスには有罪判決(罰金100ドル)が下ったが、裁判中にスコープスの弁護団が保守的キリスト教(ファンダメンタリズム)を「非科学的」「反近代的」と徹底的に批判し、多くの国民がそれに共感したことから、社会的キャンペーンとしてはむしろリベラル派(進化論推進派)こそが「真の勝者」だったとも言われる。

 米国の教育界では今日でも進化論がしばしば問題となり、キリスト教保守派の中にはホームスクーリングを選択する親も多い。ケンタッキー州ピーターズバーグの「創造論博物館」など明確に反進化論的な立場をとる教育施設も存在し、人類の起源をめぐる米国社会の解釈的分断は今日も続いている。

 スコープス裁判については米国では100年後の現在まで盛んな研究・議論が続いており、社会的関心も高い。歴史家エドワード・ラーソンの『神々の夏:スコープス裁判と継続する米国の科学・宗教論争』(1997年、未邦訳)=写真下=はピューリッツァー賞を受賞、直近では2024年にノンフィクション作家ブレンダ・ワイナップルが『信仰を維持する:神、民主主義、全米を釘づけにした裁判』(未邦訳)を書きベストセラーとなっている。

(木村 智)

海外一覧ページへ

海外の最新記事一覧

  • HungerZero logo

    HungerZero logo
  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘