新改訳聖書 刊行55周年で 著作権めぐる歴史を公式文書に 2025年9月4日

新日本聖書刊行会(SNSK)が翻訳し、いのちのことば社が発行してきた新改訳聖書が刊行55周年を迎えたことを記念し、両者は9月3日、同聖書の歩みと歴史認識を初めてまとめた公式文書「新改訳聖書の歴史認識共有のために――著作権者と出版社の関係に焦点を合わせて」を発表した。
特に翻訳の著作権をめぐり、「大きな戦いと痛みを経験し」たため、新改訳聖書の歴史全体をまとめるのではなく「著作権に焦点を合わせ、翻訳団体の新日本聖書刊行会と出版に当たってきたいのちのことば社が共通認識を持つよう互いに努め、作成した」という。
1955年の口語訳聖書(日本聖書協会)刊行後、文体や神学への疑義を背景に新しい翻訳を求める声が高まり、61年に新改訳聖書刊行会(SSK)が設立。米ロックマン財団の資金援助を受け、8年余りの翻訳作業を経て69年に完成、翌年『聖書 新改訳』として刊行された。以後、78年に第二版、2003年に第三版、2017年には全面改訂版『新改訳2017』が出版され、今日に至る。
同文書によると、当初の契約で著作権者は翻訳団体であるSSKのはずだったが、出版契約の表記に「©ロックマン財団」と記され、翻訳者の同意がないままロックマン側に権利があるかのような構図が生まれた。これが、後に重大な混乱を引き起こしたとされている。
1970年代以降、ロックマン財団の後継者らが著作権を主張するようになり、86年に米国で、91年には日本で裁判が起こされた。結果として新改訳聖書の著作権が翻訳団体にあることは確認されたが、信頼関係の破綻や巨額の費用など大きな代償を伴うこととなった。2000年代には改めて契約が整理され、09年にSNSKが発足。著作権問題はようやく収束し、翻訳・発行体制が整えられた。
今回の公式文書は、過ちや対立を含めた歴史を共有することで、今後の聖書翻訳事業を正しく継承するための第一歩と位置づけている。SNSKといのちのことば社は、「これまでの歴史にあらわされた神の恵みと、自らの反省を心に刻みつつ、ゆだねられた責任を果たしていく必要を覚え」「積極的に役割を担い合い、新改訳聖書の健全で力強い普及に取り組んでいく」との決意を表明している。