戦後80年で崔善愛さんが講演 「侵略戦争」が遺した在日の苦悩 2025年9月4日

52回目を迎える8・15東京集会(同実行委主催、日本キリスト教協議会=NCC=靖国神社問題委員会、日本バプテスト連盟東京地方連合社会委員会後援)が8月15日、日本基督教団四谷新生教会(東京都新宿区)で開かれ、約80人が参加した。ピアニストの崔善愛(チェ・ソンエ)さんが「侵略戦争が遺したもの――戦後80年を迎えて」と題して講演した=写真。
崔さんは冒頭、ロシアによるウクライナ侵攻との兼ね合いで「戦争」と「侵略」の違いに触れ、「戦争」と言い換えることは加害の実態を曖昧にするものであり、日本による韓国支配も単なる戦争ではなく「侵略」であったと強調。一方で、韓国では「解放記念日」とされる8月15日に、解放を喜ぶ在日コリアン1世らの感情を理解できない悲しみがあるとし、「2.5世」として日本で育ったことによるアイデンティティの揺らぎを吐露した。父からは「朝鮮人としての誇りを忘れるな」と教えられてきたものの、朝鮮に住んだこともなく、直接的な知り合いもいないため、その「誇り」が何を意味するのか悩み続けたという。
「どちらかといえば日本の被害者としての歴史観に寄り添いながらも、本当に被害だけの話で済ませていいのかという思いが常に突き上げてくる」
また、65歳になるまで一度も選挙に行けなかった現実にも触れ、永住権を持ちながら選挙権がないのは基本的人権の侵害だと訴えた。ヘイトスピーチの映像を見た後に悪夢にうなされ熱が出たという自身の体験から、「耐性ができている」と思っていた大人の自分でさえダメージを受けるのだから、「日本人ファースト」などの言説が子どもたちに与える影響は小さくないと、排外主義の台頭する社会に危惧を示した。
それでも希望を捨てずに生きられたのは、「ここにいらっしゃる皆さんのような方々の姿に接することができたから」と述べ、韓国人の遺骨を掘り起こす活動に取り組む日本人や、自身も加害者であったと認められる広島の被爆者、「君が代」を弾くことも子どもたちに歌わせることもできないと拒否する音楽の教師たちとの出会いを挙げた。
その上で、今日の国内外の状況を変えるためには、「お互いを知ること」以外にないとし、「身近にいる在日コリアンの声を聞いていただきたい。戦争の愚かさやどうしようもなさを背負って生きてこられた方々は、もっと話していただきたい。お互いに聞かなければ、私も変わることができない」と呼び掛けた。