【聖書普及150年】 翻訳と協働の歩み祝う 聖書協会世界連盟総主事ら来日 2025年10月21日

教会史と共に歩んだ聖書普及事業
教派・教団の伝統を超えて貢献

 日本聖書協会(石田学理事長)は10月1日、聖書普及事業150年を記念する式典およびレセプションを、カトリック関口教会(東京カテドラル聖マリア大聖堂、東京都文京区)、ホテル椿山荘東京で開催した。各教団・教派の代表者や賛助者ら約380人が集い、教派を超えて「神の言葉をすべての人に届ける」使命に仕えてきた150年の歩みを振り返りつつ、次代への展望を共有する時となった。

 聖書協会の働きは1804年に英国で開始され、日本では1875年にスコットランド聖書協会(北英国聖書会社)、翌年に米・英両聖書協会が支社を設置したことに端を発する。日本聖書協会は、これらを統合して1937年に発足した。

 この日、礼拝形式で行われた式典では、日本聖書協会副理事長の菊地功氏(カトリック東京大司教・枢機卿)が開会のあいさつに立ち、教派を超えた協働の意義を強調した。続いて賛美と聖書朗読、小海光氏(日本聖書協会理事)による祈祷がささげられた。

 式辞では、理事長の石田学氏が聖書協会の使命を改めて確認した上で、「信仰の先達から何を受け継ぎ、どんな未来を望み見るか。『すべての民を弟子にせよ』というイエスの大宣教命令は、枝分かれした教派や教会の伝統を超えて共通」と強調した。具志堅聖総主事は、協会の歴史を映像とともに振り返り、大正改訳、口語訳、新共同訳、そして2018年の聖書協会共同訳へと続く翻訳の系譜を紹介した。

 海外からは、スコットランド聖書協会理事長のエレイン・ダンカン氏、157の加盟国を擁する聖書協会世界連盟(UBS)総主事のダーク・ギバース氏=写真上=らが来日し祝辞を寄せた。ギバース氏は、日本の聖書協会が世界の聖書普及事業の中で果たしてきた重要な役割に触れ、「日本における聖書普及事業が、海外発の伝道活動から現地主導の活動へと移行したことは、神のみ国の働きの良い実例。日本聖書協会が、諸国からの支援に恵まれ、今では世界の他の地域の聖書協会を支援し、祝福する存在となったことを感謝したい」と語った。

 国内からは日本キリスト教協議会(NCC)議長の吉髙叶氏、日本福音同盟(JEA)理事長の水口功氏、キリスト教学校教育同盟理事長の西原廉太氏が登壇し、それぞれの立場から祝意を表した。

 吉髙氏は、「共通の翻訳聖書を共有することを通し、職制や礼典理解などを異にする諸教派・団体が同時代を生きていく上で宣教の指針を共に聞き合い、分かち合う場へと導かれてきた」ことから、日本聖書協会が「日本のエキュメニカル運動の基盤に関わる働きを担ってきた」と評した。

 水口氏は、今年のJEA総会で採択された戦後80年にあたっての声明に触れ、戦時中の日本の朝鮮半島への植民地支配と神社参拝の強要に当時の日本の教会が加担し、「聖書信仰から逸脱してしまった過ち」を回顧。異なる翻訳聖書を有する福音派からも激励の言葉を贈った。

 西原氏は、立教学院、青山学院、同志社、明治学院などのキリスト教学校の創立者たちが、聖書翻訳事業にも深く関わっていたことに触れ、「日本聖書協会の150年の歩みは、日本のキリスト教学校の歴史でもある」とし、聖書のみ言葉の種をまき続けるとの決意を新たにした。

 式典の中では、青山学院初等部聖歌隊による特別賛美もささげられ、清らかな歌声が会堂を満たした。

 式典後、会場をホテル椿山荘東京に移してレセプションが催された。来賓として出席した日本基督教団総幹事の網中彰子氏、日本キリスト教書販売株式会社(日キ販)代表取締役の戸塚邦夫氏、三省堂印刷株式会社代表取締役の木船弘仁氏、神戸女学院院長の飯謙氏らが祝辞を述べ、それぞれ聖書事業との関わりを通して得た協力の絆をひも解いた。

 クリスチャン家系の出身として知られる石破茂首相からも祝辞が寄せられ、「(聖書普及の)事業が一層発展し、希望と連帯の火が広がり、創立の精神を受け継ぎ次代へと確かな歩みが続くことを願います」とのメッセージが披露された。

 また、海外の聖書協会から数々の記念品が贈呈され、尺八奏者である飯吉規邦氏とピアニストの吉田恵氏によるコラボ演奏が披露された。会場には、ローマ教皇に献呈された特装版講壇用聖書や、150周年記念として制作されたミニチュア版新約聖書も展示され、来場者の関心を集めた。

 レセプションの中で行われた第36回「聖書事業功労者賞」の表彰式では、オランダのフォプマ・ヴィーエル製本所代表のヴィッツェ・フォプマ氏が受賞者として登壇。フォプマ氏は長年にわたり、聖書協会共同訳の講壇用聖書の造本をはじめ、日本聖書協会の出版物に高品質な製本技術を提供してきた。賞状と花束を贈られたフォプマ氏は、日本語で「本を造る仕事を始めた時、外国で楽しい仕事がしたいと思っていた夢は、特別な形でかないました」「言葉に表すことができません」と受賞の喜びを語った。

 終盤には、日本聖書協会の新たな取り組みとして、著名なクリスチャンの生涯を伝える伝記マンガのシリーズ化も発表された。

特集一覧ページへ

特集の最新記事一覧

  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘