アジア40校が京都に集結 AIとキリスト教的価値観めぐり議論 ACUCA総会 2025年11月22日

 アジア・キリスト教大学協会(ACUCA:the Association of Christian Colleges and Universities in Asia)の2025年運営会議および第26回総会が10月14、15日の両日、今期幹事校を務めた同志社大学今出川キャンパス(京都市上京区)で開催された。日本を含むアジア各国、地域のACUCA加盟校から40校の代表者など、約90人の参加者が出席し、学術的、文化的交流の場となった。テーマは「アジアにおけるキリスト教大学の将来、宗教的、文化的多様性におけるキリスト教的価値観」であった。

 14日は午前に参加者登録、および開会礼拝がもたれた。午後から2025年運営会議が開催され、登壇者によるパネルディスカッション、質疑応答の時がもたれた。その後で同志社大学のキャンパス・ツアー、さらに歓迎の夕食会がもたれた。

 15日は午前に第26回総会が開催された。ACUCA事務総長を務める木原活信氏(同志社大学副学長)から2024-2025年の活動報告がなされ、承認された。

 昼食後、参加者は京都御所、相国寺を散策し、さらに裏千家の協力の下、参加者は茶の湯を体験し、日本文化をよく知る機会となった。

 午後には次期幹事校への引き継ぎ式が行われ、ACUCAのリーダーシップは同志社大学から台湾の中原キリスト教大学へと引き継がれた。今期のACUCA会長を務めた小原克博氏(同志社大学学長)が退任演説を行い、ACUCAの将来のための提言をしつつ、任期において得られた支援に感謝の意を表した。

 14日午後のパネルディスカッションでは八つの国、地域から8人の登壇者が今次総会のテーマの下、AI(人工知能)とキリスト教、大学教育がどう関わるべきかについて、それぞれ講演を行った。

 冒頭の基調講演では、加藤映子氏(大阪女学院大学学長)が登壇し、「AI時代における心と精神の教育」と題して、AIに依存するのではなく、それを道具として用いながら、知識だけでなく「知恵」を育む教育の重要性を説いた。

 日本からは小檜山ルイ氏(フェリス女学院大学)が登壇し、AIの生成するデータについて、そのままでは信じることはできないが、人間のみがその内容を確認、評価できること、教育とは学生のそのような能力を発達させることであることを語った。小檜山氏は聖書から「主を恐れることが知識の初めである」という言葉を引用し、知識についてAIを絶対化してはならないこと、むしろ相対化すべきことを語った。

 フィリピンからはF・ファジャード氏が登壇し、AIと宣教の理念ということを論じた。ファジャード氏はAIについて肯定的に、学生の知識と他者への同情心を成長させることに役立つと語った。

 韓国からはチュン・ミヒュン氏(延世大学)が登壇し、AIとキリスト教的価値観について語った。延世大学が宣教師によって設立され、性別間の公平など、キリスト教的価値観による教育が行われてきたところ、現在ではそれが難しくなっていることが述べられた。チュン氏はAIは現代社会の反映であり、そこには経済的利益の追求、各国の文化の破壊が見られるが、しかしそのことに対抗することがオクシデンタリズムになってはならないと訴えた。

 台湾からはリン・ヤオタン氏(文藻外国語大学)が登壇し、AIと人間の知性ということを論じた。リン氏はカトリックの立場からローマ教皇庁のガイドラインを示した上で、倫理こそがAI教育の中核になるべきことを訴えた。さらにローマ教皇庁のガイドラインが、教員、学生の両者によって遵守されていくべきと述べた。リン氏は最後に、AI時代におけるキリスト教高等教育の役割は技術と人間性の対話を整えていくことにあると語り、クリスチャンの持つ深い信仰、そして人間性についての深い視点がアジア、またそれ以外における教育に対する独自の貢献を増大させると訴えた。

 タイからはパチャラ・ブーンティララック氏が登壇し、自身の娘との間にあったAIを使うべきかどうかのやりとりをシェアしつつ、今日学生たちにAIの使用を単に禁じることはできないこと、どのようにしてAIを使うかを教えるべきことを語った。

 登壇者の発表を総括して加藤映子氏が、AIが発展することで、その能力がいつか人間のアシスタントをしのぐほどになるであろうこと、教員にとっても研究、教育の多くをAIに任せることができるであろうと語り、問題点は「我々(教員)」がどのようにしてAIを用いるかにあり、倫理的にAIを用いることが大事であるとまとめた。

 その後で参加者からの質問、登壇者の応答がなされた。閉会の言葉を述べたC・カーセネッカ氏(中原キリスト教大学)は、教育について、学生たちの精神が変革されていくことが大事であり、現代の混乱した時代にあって福音のメッセージ、神の愛こそが永続するものであること、それが一人一人の変わらない土台であることを確認した。

 質疑応答の後で全参加者による写真撮影が行われ、ACUCA各校の参加者同士が旧交を温め合う和やかなひとときとなった。

 ACUCAの2025年運営会議、第26回総会の開催、運営に尽力した木原氏は自身の公式ブログにおいて、参加者たちの間に生まれたクリスチャンとしての交流を明らかにし、またアジア各国、地域の若者がキリストにある「信仰・希望・愛」を共有し、成長していくことへの期待を示した。

(取材・文責=村山直樹)

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