【宗教リテラシー向上委員会】 「ニューメディア」を活用する新宗教 道蔦汐里 2025年12月1日

 11月5日、2025年新語・流行語大賞のノミネート語が発表され、その一つに「オールドメディア」が選ばれた。〝新しい〟メディア(ニューメディア)であるTikTokやYouTube、Instagramなどソーシャルメディアを活用した発信が影響力を持つようになった一方で、新聞やテレビといった歴史あるメディアは〝古い〟メディア(オールドメディア)として括られ、相対的に軽視される風潮を象徴している。大量の情報が短時間で消費され、真偽の判断が難しい現在のメディア環境において、宗教情報を取り巻く状況は大きな影響をうけている。では、宗教団体自身はこのメディア環境の変化にどう対応しているのだろうか。

 筆者が専門とする新宗教においては、一部の教団でニューメディアへの適応、そして活用が進んでいる。ここ最近で注目される動きは、今年5月のSOKA YOUTH MEDIAによるYouTubeチャンネル「創価学会の日常チャンネル」の開設だろう。東京・信濃町にある創価学会の本部施設の内部を紹介したり、非信者の訪問者と本部職員が共に御本尊の前で題目三唱したりするなど、これまで閉ざされがちだった内側を積極的に公開している。創価学会の公式YouTubeとは一線を画しており、新しい広報戦略と捉えることができる。また9月29日公開の動画では原田稔会長が登場し、インタビューに答える形で教団の内情や池田大作名誉会長とのエピソードを紹介している。現在の教団トップが動画に登場し、フランクにインタビューに答える様子を公開するという試みに、野心的な印象を受ける。またチャンネル登録者数12.6万人(11月18日時点)に対し、再生回数が100万回を超える動画もあり、潜在的な関心の高さがうかがえる。

 筆者の主な研究対象である天理教も、近年は特にInstagramでの発信に注力している。教団の広報機関である道友社のほか、青年会・婦人会・学生会などの各組織がそれぞれアカウントを持ち、行事の様子や日々の活動を発信している。特に学生会向けWebマガジン「Happist」のアカウントでは、若年層に訴える工夫を凝らした投稿が目立つ。また青年会は「SNSたすけ」という活動も展開しており、宗教活動とソーシャルメディアの接続がみられる。さらには全国の各教会でもアカウントを開設する動きがある。ニューメディアにより、教団や宗教者個人による発信が容易になったことで、これまで外側には知る機会が限られていた教団や地域の教会の活動が可視化された。

 しかし、匿名性が高く拡散力の強いニューメディアの特性による弊害も無視できない。SNSを介した宗教勧誘や誤情報の拡散は以前から問題となっており、とりわけ毎年春先には「#春から○○大学」といった新入生向けハッシュタグを利用した勧誘への注意喚起が大学などで行われている。特にオウム真理教の後継団体に関しては、地下鉄サリン事件から30年が経過した今、事件を知らない若い世代がネット上で危険な情報に接するケースも報告されている。

 「ニューメディア時代」では、宗教情報を誰がどのような意味・文脈で発信しているのかを見極め、読み解く力が必要になる。誰でも自由に発信できるからこそ、情報の背景知識や意味を考える力が欠かせない。それと同時に宗教者や研究者も、時代に合わせた発信力を持つことが求められる。宗教情報リサーチセンターも今年5月にInstagramアカウントを開設した。事業内容や研究員の活動などを発信することで、宗教に関心を持ってもらい、宗教リテラシーの向上に寄与することが期待される。メディアの変化によって、宗教と社会の関係も変化する。しかし、どのメディアを通しても問われるのは、読み解く力と伝える力だろう。

道蔦汐里(宗教情報リサーチセンター研究員)
 みちつた・しおり 1996年神奈川県生まれ。東京科学大学環境・社会理工学院博士後期課程在籍中。論文に「『宗教2世』をめぐる用語と意味の変遷」(中外日報社、第21回涙骨賞奨励賞)がある。

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