NCC 原発再稼働容認の新潟県知事に撤回求める 2025年12月5日

新潟県の花角英世知事が11月21日に東京電力柏崎刈羽原発6号機、7号機の再稼働を容認したことを受けて、日本キリスト教協議会(NCC)平和・核問題委員会(目黒昭彦委員長)は28日、高市早苗首相、飯田祐二経済産業相、花角知事に宛てて請願書を送付し、抗議するとともに再稼働容認の撤回を強く求めた。
請願書は、「福島の反省を忘れてはならない」「花角知事の再稼働容認の判断は妥当なものか?」「東京電力の管理体制は問題ないか?」「原子力規制委員会は、知事の再稼働容認を追認するのか?」「日本は地震大国であることを忘れてはならない」の5項目を挙げ、福島第1原発事故の経験に鑑み、原発ゼロに向けたエネルギー政策の再転換(原発政策からの撤退)を高市首相に要請した。
請願書の全文は以下の通り。
内閣総理大臣 高市早苗様
経済産業大臣 飯田祐二様
新潟県知事 花角英世様
柏崎刈羽原子力発電所6号機、7号機の再稼働容認に抗議します
わたしたちは、先般11月21日に新潟県知事 花角英世知事(以下、花角知事)が記者会見において東京電力柏崎刈羽原子力発電所(以下、柏崎刈羽原発)6号機、7号機の再稼働を容認の考えを表明したことを受け、これに抗議をするとともに、再稼働容認の撤回を強く求めます。また、高市新内閣におかれては、2011年3月11日の福島第1原子力発電所(以下、福島第1原発)の核事故の経験に鑑み、原発ゼロに向けてエネルギー政策の再転換(原発政策からの撤退)をされることを要請します。
記
1. 福島の反省を忘れてはならない
冒頭述べたように、2011年3月11日の福島第1原発の過酷事故は、甚大な被害を地域に与えました。福島では事故後15年、事故を起こした原発の処理も廃炉も見通しさえ立っていません。「原子力緊急事態宣言」は発出されたままで、県内外に数万人の方々が避難生活を強いられ、「避難指示区域」や「帰還困難区域」は、依然として立ち入りが制限されています。故郷を追われた多くの人々、また、原発事故によるものとして裁判で争われている放射能による甲状腺がんに苦しむ人々が現在も係争中です。これらのことは、「福島の反省」であったはずです。
しかしながら、今回の再稼働容認は上記の「福島の反省」に立つことをしない独断的な判断であり、かつ地方から首都圏への電力供給といった従来の原発政策への回帰という路線であって、福島第1原発の核事故後に策定された「原発の依存度を下げていく」という政策がいつの間にか逆コースとなった原発への回帰は到底受け入れることは出来ません。
2. 花角知事の再稼働容認の判断は妥当なものか?
新潟県が進めた県民意識調査では、「再稼働の条件は現状で整っている」と思わない人が6割、東電が原発を動かすことが心配だとする人は7割にも上ったことが新聞で報道されています。(東京新聞11月22日)
新潟の市民団体(再稼働の是非を考える新潟県民ネットワーク)でも独自に行った県民意識調査によれば、再稼働の是非を問う設問に対して約6割が再稼働の是非に反対の意思を示したことが新聞(朝日新聞)で報じられています。再稼働の是非について「賛成」「どちらかといえば賛成」が合わせて31%、「反対」「どちらかといえば反対」が61%だった(「わからない」を除く)といいます。この市民団体は、「県民の民意は明確だ」と主張しました。
花角知事は、この結果をどのように受け止めているのでしょうか。調査結果と再稼働容認の判断とは整合が取れません。このように民意を無視する形で再稼働の容認を決めたことは妥当な判断とは言えません。県民意識調査の結果を見れば正しい答えは明らかです。
3. 東京電力の管理体制は問題ないか?
東京電力の社員によって2020年と2024年にテロ対策文書が持ち出されていたと原子力規制委員会が11月20日に公表しました。そればかりか、2021年には社員のIDカード不正利用などのテロ対策不備が発覚して原子力規制委員会から運転禁止命令を受けた経緯があることは記憶に新しいことです。前述に示したように、「東電が原発を動かすことが心配だとする人は7割にも上った」という意識調査の結果はまさに東京電力の管理体制に対する不安を端的に示したものに他なりません。この状況がどのように改善されたというのでしょうか。少なくとも、東京電力と再稼働を容認する花角知事は、この件について県民に説明する責任があります。
4.原子力規制委員会は、知事の再稼働容認を追認するのか?
上記の東京電力のテロ対策不備の案件は複数の可能性があることが分かっており、東京電力は引き続き調査を継続するとのことですが、この状態で原子力規制委員会は再稼働容認を追認できるのでしょうか。運転禁止命令はなし崩しに解除されるのですか。追認できるなら、理由を示すべきです。
2022年7月から原子力規制庁のトップ3が経産省出身者で占められているようですが、このような組織ではチェック機能も充分に果たせず、組織として疑問がありと言わねばなりません。
5.日本は地震大国であることを忘れてはならない
何よりも、日本が地震大国であることを忘れてはなりません。私たちがどのように準備をしても、自然を制御することは出来ないのですし、発生を予測することも出来ません。私たちは常に自然に対して謙虚であらねばなりません。このように考えれば、原発を日本で稼働することは出来ないのです。私たちが核と共存できないことは福島核事故の教訓でした。常にこのことを思い出すべきです。
原子力発電のような、一度過酷事故が起これば多くの命が失われ、子孫に核の廃棄物を生み出すものから一日も早く撤退することを強く求めます。再稼働の容認は速やかに撤回してください。
以上
日本キリスト教協議会(NCC)平和・核問題委員会
委員長 目黒昭彦

















