【この世界の片隅から】 牧会者の育児休業 李 惠源 2025年12月25日

 韓国にある大学の神学部に私が入学したのは、1999年のことであった。神学部の定員60名のうち女子学生は私を含めて20名であったが、それ以前までは、女子学生が5名を超えることはほぼなかったと聞いている。今から考えると、女性の牧会者増加の波が起こる中、私たちもその波に乗っていたということであろう。卒業後、神学部における同期の女性のうち、少なくない人数が牧師となっていった。そのようなこともあり、教会の中においても女性牧会者の活躍の場がスムーズに開けていくように思えた。新しいミレニアムと共に教会内にも新しい時代が開けていくかのように感じていたのである。

 それから数年が経ったころ、牧会現場で働く同期の女性牧師たちのうちの幾人かが困難な状況に陥っているとの噂が伝わってきた。牧師となった30代の女性同期たちが、結婚や出産を経た後、子育てのために牧会現場からしばらく離れることで牧師免職の危機に陥っているというのである。

 例えば、メソジスト派の大韓基督教監理会では、牧会者の育児休業を保障する制度がなく、子育てのために牧会に従事できない期間は「未派」(同教団は牧会者の派遣制をとっており、派遣されていないことを「未派」という)とみなされ、未派2年、休職2年を経て、「退会」、すなわち免職となってしまうのであった。他の教団も同様であった。

 それから十数年が過ぎた今年10月29日、大韓基督教監理会の第36回総会において、牧会者育児休業制度が採択されたとのニュースが流れた。今回通過した制度は、出産・育児中の牧会者は、所属する年会(教区)の監督の承認を受ければ、満8歳以下の子ども1人当たり2年以内、最大6年以内の出産・育児休業を取得することができるというものであった。これにより、多くの女性牧会者たちが免職の危機を免れるようになるであろうと思われる。

ChatGPTによるイメージ

 現在、韓国プロテスタントの主要教団のうち、女性牧会者の出産休暇(3カ月)を制度的に保障しているのは、韓国基督教長老会・韓国救世軍・大韓基督教監理会の3教団のみであり、育児休業を保障する教団は、昨年の総会において憲法を改正して1年以下の有給育児休業制度を設けた韓国基督教長老会と今年の総会で無給育児休業制度を導入した大韓基督教監理会だけである。

 韓国において女性按手制度を導入したのは大韓基督教監理会が最初であり、今年はその70年目の年となる。韓国基督教長老会の場合は、昨年に女性按手制度50周年を迎えている。70年や50年という長い歳月において出産・育児に従事することが軽視される中、牧会者名簿から名前を消されてしまった女性たちの数は少なくはないであろう。

 新しいミレニアムの最初の世紀も4分の1が過ぎ去った2025年に、育児休業制度を導入した教団がようやく二つになったとのニュースに接し、そのことを喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか判断に迷ってしまうところである。キリスト者として私たちができることの一つは、牧会現場において実際に育児休業が認められていくのか、育児休業を取得した牧会者たちが復職を果たすことができているのか、また他教団にもこの制度が広がっていくのか目を凝らして見守ることである。

李 惠源
 い・へうぉん 延世大学研究教授。延世大学神学科・国語国文学科卒業、香港中文大学大学院修士課程、延世大学大学院および復旦大学大学院博士課程修了。博士(神学、歴史学)。著書に『義和団と韓国キリスト教』(大韓基督教書会)。大阪在住。

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