【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】 輝くいのち 今井朋恵 2025年12月25日

 赤ちゃんは、よく寝てよく泣く。その愛くるしさに、私は幸せを分けてもらった気持ちになる。生産性とは無関係に受容される存在は、周りを優しくする。

 教会の庭で、植物の不思議を経験する。植えた覚えのない木が生えている。春と夏に黄色い花が元気に咲き続け、教会の入口を飾る。新たに土を入れると新しい草が生えてくる。青々と茂る草との格闘を経て、草の勢いが止まる冬の時期、こちらも春までしばしの休息。植物も個々のいのちを生きている。

 今年、文部科学省が公表した2024年度の小中高等学校及び特別支援学校におけるいじめの認知件数が、最高最多の76万9022件を記録したという。前年比5.0%増、重大事態の発生は前年比7.6%増となり、SNSを介したいじめが背景にあると言われる。生き辛さが、子どもたちの世界を覆っている。子どもは社会を映す鏡のよう。若い人たちや現役世代、高齢者もあまり幸せそうに見えない。大人たちが抱えるネガティブな思いは、現状を打破できない背負わされた遺産、世代を越えた負の連鎖の側面もあるだろう。

 コロナの時期、地域の子どもたちへのみ言葉カード配りで驚いたことがある。子どもたちが、明るいピンクや黄色のカードを嫌がり、紫の沈んだ色のカードをたいそう欲しがった。紫は、高貴な色と言われるが、不安を表す色でもある。「マスク着用・個食・おしゃべり禁止」そのような時期だった。子どもたちの心に影響が及んでいると感じた。

 小学校の前に建てられた教会として、私たちは子どもたちとの関わりを大事にしてきた。その中、確かなこととして受けたことは〝子ども時代の大切さ〟である。子どもは親を選ぶことはできないし、子どもは親を嫌いになることができない。自分も子を持つ親の一人として、100点満点の親はいないと思う。自分のエゴを親の愛情と諭したこともあったかもしれない。

 一人の人が育つには、親に限らずたくさんの人たちの関わりが必要だ。自分は愛される大事な存在だと知っている人は、自分で考え行動し、結果的にいろんなリスクを遠ざける可能性が高いと思う。一方、自分に自信がなく他者より劣っていると思い込んでいる人は、周囲が気になって合わせる傾向がある。社会的強者は、支配下に置く人を嗅ぎ分ける。 いじめ、DVやハラスメントは、人間の力関係の中で起こっている。

 私は大人になってキリスト教の世界に入った。思うに、教会は企業のように生産性を上げ、利益を追求する所ではない。社会の中にありながらも、社会とは違う時間の流れが似合う。また、教会は多くの人々にとって、家庭や学校、病院のように必須の場所とは言えないかもしれない。それでも、教会が地域に温かさや安心を与え、特別な目的がなくても気軽に立ち寄れる公共の場となれば幸いだ。

 世界や社会に不確かさが渦巻く時代にあって、各々の地域に一時避難や心のよりどころとしての教会があることを望む。キリストの平和を語り続ける教会は何も持たず無力のようだが、何が本当なのかが分からない時代の中で、いのちに携わる貴重な存在だ。「あなたは愛されている」と、語り続けることが、教会にできる一番のことと信じて。

いまい・ともえ 九州出身。短期大学日本文学科卒業後、写真印刷社の企画部勤務を経て、西南学院大学神学部へ入学、1992年3月同大学卒業。1992年4月に日本バプテスト連盟今治バプテスト教会へ牧師として赴任、現在に至る。2018年より徳山バプテスト伝道所協力牧師を兼務。趣味は油絵。

連載一覧ページへ

連載の最新記事一覧

  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘