音楽と証言が照らす「希望の光」 ワールド・ビジョン・ジャパンがチャリティーコンサート 2025年12月23日

国際NGOワールド・ビジョン・ジャパン(WVJ、中島みぎわ事務局長)主催による「クリスマスチャリティーコンサート――世界の子どもたちに希望を」が12月6日、ウェスレアン・ホーリネス教団淀橋教会(東京都新宿区)で開催された。会場には約270人が集い、音楽と現地報告を通して、世界の子どもたちの現状と支援の意義に耳を傾けた。
前半では、東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校の生徒有志による弦楽・管楽四重奏、マリンバ奏者の塩浜智子・玲子姉妹とパーカッショニストの赤羽一則さんによるユニットの演奏が披露された。

後半は、WVJスタッフの松岡拓也さん(支援事業第1部人道・開発事業第1課課長)が、アフリカ東部のソマリランドにおける深刻な食糧危機について報告。ソマリランドは1991年にソマリアから独立を宣言したものの、国際的には国家として承認されていない地域で、紅海に面する北西部に位置する。干ばつと洪水が繰り返される、地球上でも特に気候変動の影響を受けやすい場所の一つだという。
同地域では2021年以降、過去40年で最悪とされる干ばつが続き、7万人以上が命を落とし、その約4割を子どもが占めている。水の確保も困難となり、作物は枯れ、家畜も失われ、多くの人々が農村部を離れて避難民キャンプでの生活を余儀なくされている。枝を組み、布やビニールシートをかぶせただけの簡素なテントが砂地に点在し、安全な水やトイレといった衛生環境も極めて乏しい。松岡さんは「食糧支援は、もはや命をつなぐ最後の通路になっている」と語った。
現地の母親の証言として、「子どもに食べさせる物がなく、お腹が空いたと訴える子には、水を沸かしてご飯を作っているふりをして寝かしつけるしかない」という言葉も紹介し、松岡さんは「一人の父親として、胸が締めつけられる思いだった」と率直な思いを語った。
WVJは世界食糧計画(WFP)と協力し、食糧支援を行っている。現地では派遣された看護師が子どもたちの身長や体重、上腕の太さを測定し、栄養状態を確認していた。一方、世界的な資金不足により人道支援が縮小され、必要な栄養食が十分に行き渡らない現実も明らかにされた。最前線の支援スタッフは、「限られた支援を誰に届けるのか」という厳しい選択を迫られているという。松岡さんは、ワールド・ビジョン・ソマリア代表の声明を紹介し、「支援を拡大する準備は整っている。今こそ世界が行動するときだ」と訴えた。
続いて、俳優でWVJ親善大使の酒井美紀さんが登壇。酒井さんは2005年からチャイルド・スポンサーとして支援を続け、現在はフィリピンとカンボジアの2人の子どもを支えている。
支援を始めたきっかけとして酒井さんは、2005年に出演したテレビ番組の取材で、フィリピン・マニラ郊外のスモーキーマウンテン(ごみ集積場)を訪れた体験を振り返った。そこでは、11歳の少女をはじめ、多くの子どもたちがごみの山から換金できる資源ごみを拾い集めることで生計を立てていた。1日働いても得られる収入はわずかで、子どもたちは大人が拾い残した物を探して山に分け入っていたという。
「同じ地球、同じ時間を生きているのに、こんなにも違う現実があることに大きな衝撃を受けました」。取材中、危険だから来ないでと少女に気遣われたことで、かえって「目の前の一人の女の子さえ助けられないのか」と自身の無力さを痛感した。帰国後、「自分にできることは何か」を考えた末にたどり着いたのがWVJのチャイルド・スポンサーシップ。「継続的な支援を通して、同じような状況に置かれている子どもたちを支えることができる」との思い出始めた支援は、今年で20年目を迎える。
フィリピンでの支援状況について写真を交えて報告した野本理恵さん(支援事業部プログラム・コーディネーター)は、チャイルド・スポンサーシップの役割について「子どもたちが元々持っているやる気や希望を隣で支え、近くで見守ることができる仕事」と表現。支援から「卒業」したチャイルドによるスポンサーへの手紙を代読した酒井さんは、「一人ひとりの心の成長や、意識を変えるのは本当に難しいこと。今回の報告で、長い時間をかけた継続的な支援によって子どもが成長し、変化していく親の姿も見せてもらうことができた」と感謝を伝えた。

会場ではクリスマス募金やチャイルド・スポンサーシップへの申し込みも受け付けられた。WVJでは12月25日のクリスマスまでに、厳しい環境で生きる子どもたちに「希望」を贈ろうと、「希望を、贈ろう。」キャンペーン(https://www.worldvision.jp/campaign/26_christmas/index.html)を実施。同時に、1000人の少女のチャイルド・スポンサーを募集する「1000GIRLSプロジェクト」も展開している。早すぎる結婚、性的搾取、暴力など、「女の子である」という理由で、多くの困難に直面する子どもたちが、未来を切り開けるよう支援する取り組み。詳しくはWVJの特設サイト(https://www.worldvision.jp/donate/childsponsor/1000girls/index.html)まで。
写真提供=国際NGOワールド・ビジョン・ジャパン
















