衆院選での排外主義煽動に懸念 外キ協など11団体が緊急共同声明 2026年1月27日

 外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)をはじめ、外国人、難民、民族的マイノリティの人権問題に取り組む11団体は1月26日、「衆議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対する緊急共同声明」を連名で公表し、都内で記者会見を開いた。声明は各政党および政府に送付された。

 声明は、昨年の参議院選挙において、外国人を排斥するヘイトスピーチが各地で相次ぎ、排外主義を掲げる政党が議席を伸ばした現状を踏まえ、今回の衆院選でも同様の事態が繰り返されることへの強い危機感を示している。選挙演説における差別的言動や、それに抗議する市民への排除や脅迫が横行したことを問題視し、「放置すれば民主主義そのものが破壊される」と警鐘を鳴らした。

 また高市政権発足以降、在留審査や国籍取得の厳格化、外国籍者の制度的排除、強制送還の増加など、外国人への不安を煽る政策が急速に進められていると指摘。その影響で、外国人やイスラム教徒を標的とするデモや街頭宣伝、インターネット上のヘイトスピーチが増加し、日常生活の中での差別も深刻化していると訴えた。

 一方、「外国人が優遇されている」「外国人犯罪が多い」といった言説は事実に基づかないデマであり、日本には外国人の基本的人権を包括的に保障する法律すら存在しないと強調。住民移転の届け出義務違反に対する罰則など、法制度上の差別も具体的に挙げた。

 さらに、昨年12月に国連の人種差別撤廃委員会と移住労働者権利委員会が公表した「外国人排斥根絶のためのガイドライン」にも言及。選挙目的で移民や難民を問題化しないこと、非人間化する表現を用いないこと、排外主義的言動に対して調査と制裁を行うことを、国際社会が各国に求めていると紹介。

 各政党・候補者に差別を煽らない姿勢を求めるとともに、政府・自治体には選挙におけるヘイトスピーチは許されないとの周知徹底を、報道機関にはファクトチェックと差別的言説への明確な批判を求めている。

 その上で、国籍や民族の違いによって排除されることのない共生社会の実現に向け、「一人ひとりが選挙における差別の煽動を放置せず、声をあげることが求められている」と訴えた。

 声明の全文は以下の通り。


衆議院選挙にあたり排外主義の煽動に反対する緊急共同声明

 私たちは、外国人、難民、民族的マイノリティ等の人権問題に取り組む団体です。

 私たちは、昨年7月の参議院選挙の際に、政府も多くの政党も排外主義煽動を競い合っている状況を批判し、政府等に対し、ヘイトスピーチが許されないことを広報することなどを強く求める声明を出しました。

 しかし、各地の選挙演説で外国人を排斥するヘイトスピーチが多数行われ、それを批判する人々に対し、「お前日本人じゃないだろう」等の差別的な脅迫や排除が行われました。また、排外主義を唱えた政党が当選者を増やす結果となりました。

 昨年10月に発足した高市政権は、外国人への根拠のない不安を煽り、在留審査や日本国籍取得の厳格化、教育の無償化制度からの外国籍者の排除などの外国人規制策を急速に進めています。同年5月に出入国管理庁が発表した「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を強行に推進し、強制送還を前年比でほぼ倍増させています。その結果、日本で生まれ育った非正規滞在の子どもたちやその家族、他国であれば難民認定されたであろう人々等が、突如日本での生活を根こそぎ奪われる理不尽に苦しめられています。

 政府の差別的政策に後押しされ、昨年10月以降、外国人やイスラム教徒の人たちを排斥するデモや街頭宣伝が急増し、インターネット上にヘイトスピーチが氾濫しています。住居や駐車場を貸してくれなくなった、クレジット契約更新を断られた、クラスメートから「日本人ファースト」と言われたなど、日常的な差別も悪化しています。

 しかし、「外国人が優遇されている」「外国人による犯罪が多い」というのは根拠のないデマです。日本には外国人に基本的人権を保障する法律すらなく、選挙権もなく、公務員になること、生活保護を受けること等も法的権利としては認められていません。医療、年金、国民健康保険、奨学金制度などで外国人が優遇されているという主張も事実ではありません。それどころか、住居移転の届け出義務違反の罰則は、日本人は5万円以下の過料、外国人は20万以下の罰金とされているなど法的な差別もあります。

 ヘイトスピーチ、とりわけ排外主義の煽動は、外国人・外国ルーツの人々を苦しめ、異なる国籍・民族間の対立を煽り、共生社会を破壊し、さらには戦争への地ならしとなる極めて危険なものです。

 だからこそ、人種差別撤廃条約は、締約国に対し人種主義的ヘイトスピーチを禁止し終了させ、様々なルーツの人々が共生する政策を行うことを求めています。

 しかし、先の参議院選挙の際、政府や多くの政党は、逆に差別を煽る側に立ちました。他方、多くの報道機関は、各候補者の主張のファクトチェックを実施しました。また、神奈川新聞は、昨年10月の川崎市長選挙において、大量の部落差別を繰り返してきた候補者を別扱いし、その差別的言動を批判しました。

 私たちは、今回の選挙において、さらに排外主義煽動が行われ、外国にルーツのある人々が恐怖の下に置かれ、差別に反対する声を封じる暴力的攻撃が行われることを危惧します。選挙運動におけるヘイトスピーチは放置すれば民主主義自体が破壊されます。

 そこで、総選挙にあたり、私たちは下記のことを求めます。

1.各政党・候補者は、外国人に対する偏見を煽るキャンペーンを行わず、差別を批判すること

2.政府・自治体は、選挙運動におけるヘイトスピーチが許されないことを徹底して広報すること

3.報道機関は、選挙運動についてファクトチェックを徹底するのみならず、デマやヘイトスピーチもあたかも一つの意見のように並列的に扱わず、明確に批判すること

 国籍、民族によって差別されず、誰もが人間としての尊厳が保障され、未来に希望を持ち、平和に生きる共生社会を作っていきたい。そのために、私たち一人一人が、選挙における差別の煽動を放置せず、声をあげることを訴えます。

2026年1月26日

移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
外国人技能実習生権利ネットワーク
「外国人・民族的マイノリティ人権基本法」と「人種差別撤廃法」の制定を求める連絡会(外国人人権法連絡会)
外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)
コミュニティ・ユニオン全国ネットワーク
人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)
全国労働安全衛生センター連絡会議
中小労組政策ネットワーク
つくろい東京ファンド
反貧困ネットワーク
フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)

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