【映画短評】 束縛からの解放、解放ゆえの束縛 『トゥギャザー』 2026年2月6日

 長く同棲してきたティムとミリーは結婚になかなか踏み切れない。変化を求めて田舎に移り住むが、定職も運転免許も性生活もないティムにミリーの負担は増す一方。そんな2人のすれ違いは、たまたま遭遇した地下洞窟での怪異をきっかけに、後戻りできないほど大きくなる。しかし離れていく心と裏腹に、体に起きた異変は、2人をどうしようもなく引き付けるのだった。

 「男は父母を離れて妻と結ばれ、二人は一体となる」という聖書の箇所を思い出す(創世記2章24節)。本作『トゥギャザー』が描くのは、それが文字通りに行われることの恐怖。一緒になりたいと願っていた2人が結婚を決心できず、しかし離れたいと思った時にかえって離れられなくなってしまう、その皮肉とも取れる状況で2人がどんな決断を下すのか、最後まで目が離せない。

 結婚を決断できないティムに、男性としての負い目があったのは想像に難くない。ミュージシャンとしていつまでも芽が出ず、車も運転できず、性生活にも積極的になれない。社会が絶えず求めてくる男性像を達成できない、という負い目。かといってミリーから離れることもできない。しかし絶体絶命の危機に瀕して、ティムはその負い目を捨て去る。ここに男性というジェンダーロールからの解放の一端を見ることができる。

 誰かと長く人生を共有することで「自分の人生」と「相手の人生」の境目が曖昧になっていく、その不安感が本作のきっかけになった、とマイケル・シャンクス監督は語る。結末はまさにそのメタファーだ。しかし自分の人生に誰かが組み込まれ、誰かの人生に自分が組み込まれることは、生きている以上避けられない。結局のところ人は(親密なパートナー関係に限らず)一人で生きていくわけでなく、その輪郭は誰かによって形作られるからだ。その事実を完全に受け入れたと取れる2人の決断は、だからこそ潔い。

 その潔さを彩るのが、スパイス・ガールズの楽曲『2 Become 1』(直訳すると、二人は一つになる)。ティムとミリーの馴れ初めにスパイス・ガールズのレコードがあると中盤で明かされてからの、満を持しての登場となる。また本作の予告編ではタートルズの『Happy Together』が使われており、楽曲面でも2人の人間の一体感が強調されている。特に後半は衝撃的な場面が続くが、使われる楽曲に耳を傾け、その歌詞に思いを馳せるのも面白いだろう。

(ライター 河島文成)

2026年2月6日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他ロードショー。
配給:キノフィルムズ

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