【この世界の片隅から】 香港マンション大火災 神の愛は人災を解決できるのか? 胡 清心 2026年3月1日

 2025年11月26日、香港・大埔の高層マンション群・宏福苑(ワンフック・コート)で、外壁改修工事の最中に大火災が発生した。火は43時間以上にわたって燃え続け、全8棟のうち7棟に延焼、168人が死亡、79人が負傷した。1997年の香港返還以降、死傷者数において最も深刻な火災となり、全市は衝撃と深い悲しみに包まれ、長く平静を取り戻すことができなかった。

 香港新界(ニュー・テリトリー)に位置するこの住宅団地は、香港房屋委員会が建設した「持ち家取得支援」計画の一環として整備されたもので、低所得層市民の住宅取得を支援することを目的としていた。1983年に完成し、現在は1984戸を有する。2021年の統計によれば、居住人口は4643人で、その約36%が65歳以上の高齢者である。また宏福苑周辺には約20の教会・キリスト教関連機関があり、火災発生後、地域社会の一員として、自らも被害を受けながら支援の役割を担うことになった。

火災現場近くに手向けられた花と規制線(2026年2月4日、撮影=星出卓也)

 大埔にある中華基督教会・馮梁結紀念中学は、政府の要請に応じて臨時避難所として開放され、宏福苑から避難した住民約300~400人を受け入れた。また、同校を拠点とする中華基督教会・広福堂も地域の支援拠点となり、多くの住民が集まって火災の最新情報を待ち、行方不明の家族の消息を探した。社会福祉機関はここに窓口を設置し、被災者が支援金を申請できるようにした。教会の牧師たちは被災者と住民の間を行き来しながら、寄り添い、慰め、声に耳を傾け続けた。

 広福堂の主任牧師・李筱波は、「最も辛い務めは、信徒が家族の遺体を引き取る場に立ち会うことだった」と語る。また、香港ルーテル教会(信義会)・鑽石堂の主任牧師・林一君は、この大火で3人の家族を失った。日頃は他者を慰め、支え、導く立場にある彼が、今度は慰めを必要とする側となったのである。

 現実の喪失の痛みだけでなく、宏福苑近隣の教会で働く多くの牧師や伝道師も、身を切られるような苦しみを味わっている。彼らの中には大埔で生まれ育った者もいれば、長年この地で奉仕してきた者もおり、地域と住民に深い愛着を抱いている。連日、家族を失った信徒を慰め、住まいを失った被災者のために資源を探して奔走し、あるいは火災を目撃した人々や一般住民に心理的支援を提供することは、彼らの心に大きな負担を与えている。7棟の建物が突如として激しい炎に包まれる映像がソーシャルメディアを通じて生々しく拡散され、現場にいなかった者であっても、災害の全過程を目撃した香港人は皆、ある種の被災者となり、心に傷を負った。この大火は、香港人にとって集団的トラウマの記憶となった。

 火災当日、多くの市民が自発的に現場へ駆けつけ、救急支援や物資提供、人的支援を行った。その光景は、2019年の社会運動における香港市民の団結と行動力を想起させるものであった。火災後数日で、被災者の当面の必要はほぼ満たされた。教会側の報告によれば、政府による代替住宅への入居が進んだことで住民たちは避難所を後にし、市民の善意による支援物資は現場の需要をはるかに上回っていたという。

 しかし、被災者、さらには香港社会全体が真に必要としているのは、火災原因に関する公開かつ透明な調査と、それに基づく責任追及である。だが、その実現は依然として遠い。

火災のあった宏福苑の遠景(2026年2月4日、撮影=星出卓也)

 実際、宏福苑の外壁改修工事は当初から論争が絶えなかった。住民が主に負担する修繕費用は3億3000万香港ドル(約63億円)という巨額の見積もりで、現地では「天文学的な修繕費」と批判されるほど、市場平均を大きく上回っていた。請負業者である「宏業建築」は、過去に複数の建築安全規定違反に関与しており、入札過程にも不透明な操作があった可能性が指摘されている。2024年9月には、足場の保護ネットや発泡スチロール板の耐火性能について住民が労働局に苦情を申し立てたが、当局は「リスクは低い」と判断していた。

 火災後の原因調査では、可燃性の高い発泡スチロール板と、基準を満たさない保護ネットが火勢の急速な拡大を招いたとされている。

 今年2月15日、政府が設置した火災独立調査委員会は会議を開催したが、会議内容のいかなる形式での記録も禁止され、入場時には安全検査が求められた。この姿勢は、宏福苑大火の責任が適切に追及され、同様の事件が再発防止されるかどうかについて、悲観的な見方を強めるものである。宏福苑住民の新たな住居の手配や現地再建の行方も、依然として不透明だ。

 教会が先の見えない宏福苑住民をいかに牧会し続けるかは大きな課題である。そして香港の全教会にとって、より切実な問いはこうである。「天災による悲しみは神の愛によって慰められるかもしれない。だが、人災に直面した時、教会はいかに応答すべきなのか」

(原文:中国語、翻訳=松谷曄介)

 フー・チンシン 上海生まれ、香港在住。香港中文大学、文化・宗教学研究科で博士号を取得。現在、2021年に香港で設立されたエキュメニカル志向の単立教会Hub Churchが運営するメディアHub Channelの編集担当。猫4匹を飼育。独学で日本語を勉強中。

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