【「親なきあと」をともに生きる~お寺と教会の〈語らい〉から始まる支援】 多職種連携の実際――公的機関が関心を持つ理由 稲前恵文 2026年3月11日

 「お寺がこのような場を開いてくださるのは、本当にありがたいです」

 2023年初春、お寺と教会の親なきあと相談室の支部を開設するにあたり、地域包括支援センターへ協力のお願いに赴いたところ、私の話を真剣に聞いてくださった社会福祉士の方の言葉が忘れられません。開設への不安もありましたが、今後に確かな灯りがともった瞬間でした。

 以前より住職としてお寺を護持する傍ら、身内が運営に携わる特別養護老人ホームや児童養護施設の手伝いに参加したり、職員さん向けに僧侶として講話をさせてもらったりしていました。その過程において、お寺として地域社会にもっと貢献できることがあるのではないかと常々感じていました。

 地域包括支援センターの後には、岡崎市役所のふくし相談課と岡崎市社会福祉協議会をはじめ、さまざまな関連施設や福祉団体を訪ねました。いずれも温かくお迎えいただき、協力を惜しまないと答えていただいたことは、改めて社会からかけられた期待と責任の重さに身が引き締まる思いでした。

 行政側からは「いろいろなご意見やお困りごとを私たちに知らせていただけるとありがたい」「いろいろなサポートについてご存じない方も多いので、伝える機会にもなる」などとお話しいただきました。

 相談室を始める前に「このような活動をして、行政や地域の理解が得られるのだろうか」と心配していたことは、杞憂だったと言えましょう。むしろ、こちらから地域社会にお寺を開いて、行政と連携していくことが大切であると実感しました。

 相談室の開設後は、隔月で「親あるあいだの語らいカフェ」を開いています。毎回、市内外からさまざまな背景を持つ方々がお越しになられ、お茶とお菓子を前にいろいろなお話をされています。回数を重ねるごとに表情が明るくなっていかれた方や、顔見知りとなった参加者さん同士が集まってお話をされていることも頻繁にあります。

 市の職員や社協、地域包括支援センターのスタッフも毎回参加しているほか、ボランティアの看護師や民生委員も支援者として加わり、ときには専門的見地からの助言があったり、逆に障害のある方やひきこもりの方のご家族の意見や要望に真剣に耳を傾けたりと、いつも多くの気づきがあります。

 語らいカフェで紡いだ人と人とのつながりは昨年さらに広がり、「おかざきグリーフケアマルシェin本光寺」の開催へと展開していきました。

 2回で合計700人ほどが来場され、講演や交流を通してグリーフケアについて学びを深めました。

 ある来場者の「ひきこもりの毎日だけど、勇気を出してここに来てよかった」との言葉に、「場をひらく」ことの大切さを再認識しました。また、30人近い地元の中高生がボランティアスタッフとして来場者のサポートにあたるなど、行政・ボランティア・地域・寺院が一体となって温かなつながりを創出しました。

 思えば3年前、不安の中で一歩を踏み出したその歩みが、行政をはじめ多くの方々のご協力をいただき、今も少しずつご縁の輪が広がりつつあることに、感謝の念と同時に職種の垣根を越えた「人のこころ」の力と熱量に感動を覚える昨今です。

 今なおこうして私をお育ていただいている「お寺と教会の親なきあと相談室」が、さらに大きな動きとなって、全国に柔らかく、そして確かな根を張ってつながりの輪が広がり続けていくことを願ってやみません。

 いなさき・さとふみ 真宗大谷派本光寺住職。お寺と教会の親なきあと相談室 岡崎市本光寺支部代表。岡崎市仏教会監事。お寺がいつでも相談できる、地域になくてはならない場となるよう日々活動している。

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