日本聖公会大阪教区で岩城聰司祭が講演 聖書の誤用とシオニズムに警鐘 2026年3月31日

 日本聖公会大阪教区宣教局が主催する戦後80周年記念講演会の第3回「キリスト教とシオニズム」が大阪聖愛教会(大阪市天王寺区)で開催され、岩城聰司祭が登壇した。現在のパレスチナ・ガザ地域における深刻な人道危機を背景に、なぜアメリカをはじめとする一部のキリスト者がイスラエルを無条件に支持するのか、その神学的・歴史的背景について詳説した。

 岩城氏はまず、アメリカ政府や軍隊の内部に「イランへの戦争やイスラエル支持は神の計画の一部」とする考え方が深く浸透している現状を指摘。彼らは「クリスチャン・シオニスト」と呼ばれ、パレスチナ人に対する無差別な虐殺(ジェノサイド)や、住宅・インフラの徹底的な破壊(ドミサイド)といったイスラエルの人権侵害を無批判に支持しており、彼らの思想の根底には最終戦争(ハルマゲドン)を経てキリストが再臨するという特有の終末論があると述べた。

 講演の核心として、岩城氏は「聖書のイスラエルと現在のイスラエル国家はまったくの別物である」と強調した上で、現在のイスラエルは世俗国家であり、神の教えに忠実な国家ではないという点について、シュロモー・サンドらの研究を挙げ、現代のユダヤ人が古代のイスラエル人と必ずしも血縁的に直結しているわけではないとの歴史的事実も紹介した。

 にもかかわらず、旧約聖書に記された「アマレク人を皆殺しにせよ」といった言葉が現代のパレスチナ人に当てはめられ、暴力や土地の収奪の正当化に悪用されている現状について、岩城氏は「神への冒涜」であると厳しく非難。

 キリスト教シオニズムの起源は、ユダヤ人によるシオニズム運動よりも古い。17世紀頃のイギリスにおける宗教的変革期に生まれた「千年王国論」や、その後に発展した「ディスペンセーション主義(世代主義)」がベースとなっている。これらの思想がアメリカに渡り、現在の福音派などを形成した。さらに、中東での覇権を狙う当時のイギリス帝国主義の利害とキリスト教シオニズムが結びついた結果、バルフォア宣言などの歴史的悲劇を生み出したと解説した。

 また、欧米社会においてイスラエル批判を直ちに「反ユダヤ主義」と結びつける風潮にも警鐘を鳴らし、ホロコーストの悲惨な歴史が、1967年の第三次中東戦争以降、パレスチナ人を抑圧する口実や自国を「永遠の被害者」と位置づけるために政治的に利用(資本化)されている側面を指摘。イスラエル国家の非人道的なやり方に反対することは、決して反ユダヤ主義ではないと明言した。

 岩城氏は最後に、私たち日本のキリスト者の中にも、聖書を読むうちに無意識に刷り込まれている「イスラエル贔屓(自動的にイスラエルを支持しなければならないという思い込み)」の思想があると指摘。これを克服しなければ、中東の人々の窮状に真に共感し、連帯することはできないと訴え、聖書の都合の良い一部の言葉だけを文字通りに解釈して強引に当てはめるのではなく、神の救済の計画を全体として捉える視点の重要性を提起し、講演を締めくくった。

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