米・元福音派牧師が共和党と決別 「MAGA運動」を批判 信仰の政治利用と「愚行」に警鐘 2026年4月5日

 米ミネソタ州の福音派引退牧師パット・カンケ氏が、共和党および「MAGA(Make America Great Again)」運動との決別を表明し、聖書の観点から現代政治を問い直す動画シリーズを発信している。題して「聖書対MAGA」。毎週日曜日に公開され、福音派内部からの批判的言説として関心を集めている。

 カンケ氏は長年、いわゆるプロライフ運動に関わり、共和党支持者として活動してきたが、2016年にドナルド・トランプが大統領候補となったことを契機に、信仰との齟齬を強く意識するようになったという。その後、問題は特定の政治家にとどまらず、宗教と政治権力の結合そのものにあるとの認識に至った。

 動画の中で同牧師は、MAGA運動をキリスト教信仰によって正当化する試みに疑義を呈する。「悪い木から良い実はならない」との聖書の言葉を踏まえ、虚偽や排外性を伴う政治運動を神の目的と結びつけることはできないと指摘。トランプを「神に選ばれた指導者」とする言説や、預言的主張によって政治的立場を正当化する動きについても、神学的に問題があるとする。

 さらに、宗教指導者が政治的影響力の拡大と結びついて発言する現状に懸念を示し、宗教と権力の結合が歴史的に独裁や人権侵害を招いてきた事例に言及する。現代米国においても、キリスト教ナショナリズムや預言的言説が一定の影響力を持つ状況を「危機的」と捉える。

 一方で、同牧師は特定政党への無条件の支持を否定し、無党派の立場を取ることを強調する。信仰は個人の生き方の指針となり得るが、それを政治判断の絶対的基準として他者に適用することには慎重であるべきだとし、政教分離の重要性を訴える。

 別の動画では、福音派によるトランプ支持の背景について、神学的・倫理的分析を展開する。その際に参照されるのが、ナチス期に抵抗運動に関わったドイツの神学者ディートリッヒ・ボンヘッファーの議論である。ボンヘッファーは、人間の「愚かさ」が悪意以上に社会に危険をもたらし得るとし、人々が事実を理解できないのではなく、自らの先入観や利害に沿って事実を退ける点に問題があると論じた。

 カンケ氏はこの視点を援用し、現代の福音派における政治的選択についても、単なる誤情報の問題ではなく、価値観や欲望に基づく選択の側面があると分析する。また、宗教指導者だけでなく、それを支持する信徒側の責任にも言及し、「聞きたいことを語る指導者」を選び取る構造を指摘する。

 ただし同時に、こうした状況に対して他者を一方的に断罪することには慎重な姿勢を示す。自らも同様の弱さを抱える存在であるとし、対立や非難ではなく、関係性と対話を通じた変化の可能性を重視する立場を取る。

 米国では、福音派と保守政治の結びつきが長年指摘されてきたが、近年は内部から距離を取る声も散見される。信仰と政治の関係をめぐる問いは、引き続き米国キリスト教界における重要な論点となっている。

海外一覧ページへ

海外の最新記事一覧

  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘