「弱さでつながる」社会へ 映画『カミングアウトジャーニー』上映 福正大輔さんがHIV、依存症、結婚の自由を語る 2026年8月6日

ドキュメンタリー映画『カミングアウトジャーニー』『カミングアウトジャーニー2 結婚式篇』の上映会とアフタートークが8月5日、日本福音ルーテル東京教会(東京都新宿区)で開かれた。CWSジャパンが運営する「コミュニティ・カフェ@大久保」の主催。映画を企画・製作した福正大輔さん(演出家、俳優、社会福祉士、公認心理師)が、自身の経験を踏まえ、HIV、依存症、同性婚、司法福祉について語った。
コミュニティ・カフェ@大久保は、多文化共生を目指し、市民や外国ルーツの人々、難民らが出会い、対話し、互いに支え合う地域づくりを目的として開かれている。
上映された『カミングアウトジャーニー』は、福正さんが男性同性愛者であり、薬物依存症からの回復者、HIV陽性者であることを、友人や家族、職場などに伝えていく過程を追ったドキュメンタリー。続編『カミングアウトジャーニー2 結婚式篇』では、国内法では同性婚が認められていない中、同性パートナーと牧師の司式による結婚式を挙げるまでの歩みを描いている。
上映後のトークで福正さんは、同性カップルの結婚式を記録した理由について、「男同士でも女同士でも、どんな性別でも結婚式を挙げたいし、結婚式はみんなを幸せにするだけだということを伝えたかった」と説明。「結婚という制度は人間がつくった制度だから、社会の変化に合わせて変えていくこともできる」と語った。
また、自身がHIV陽性者として20年以上生活してきた経験にも触れ、治療を継続して血液中のウイルス量が検出限界値未満になれば、性行為によって他者へ感染させることはないという「U=U(Undetectable=Untransmittable)」の考え方を紹介。「まだ日本では十分知られていない。ぜひ今日覚えて帰ってほしい」と呼び掛けた。
一方で、「病気は不幸ではないが、毎日薬を飲み続けることはやはり大変」と率直な思いも語った。その上で、コンドームだけでなく、曝露前予防内服(PrEP)や定期的な検査などを組み合わせる「コンビネーション予防」の重要性を説明し、「自分に合った予防法を考えてほしい」と訴えた。
厚生労働省によると、国内では現在も毎年約千人が新たにHIV感染と診断され、その約3割はエイズを発症して初めて感染が判明している。福正さんは、新型コロナウイルス禍以降、HIV検査件数が十分に回復していない現状にも触れ、「感染から発症まで5~10年かかることを考えると、決して楽観できる状況ではない」と早期検査の重要性を強調した。
薬物依存症については、自身も29歳で覚醒剤取締法違反により逮捕された経験を振り返り、「依存症は人に相談できず、一人になっていく『孤立の病』」と表現。医療だけでなく、自らと同じ経験を持つ人々が支え合う自助グループへの参加が回復につながるとし、「悩みを抱えているなら、ぜひ仲間を探してほしい。なければ一緒につくればいい」と呼び掛けた。
同性婚をめぐっては、「結婚の自由をすべての人に」訴訟が最高裁大法廷に回付され、今後、統一的な判断が示される見通しであることにも言及。「婚姻の平等は幸せな人を増やすだけではない。将来に希望を持てる社会は若者の命も守る」と語り、性的少数者の自殺率やメンタルヘルスの改善に関する海外の研究も紹介した。
現在は、社会福祉士、公認心理師として、罪に問われた人と司法・福祉をつなぐ「司法福祉」の分野でも活動している。「事件だけを見て刑罰を科すのではなく、その人がどんな人生を歩み、何が事件の背景にあったのかを知ることが大切」と述べ、自身が被告人の生活歴や家族関係を調査し、裁判所や検察官に伝える更生支援に携わっていることを紹介した。
最後に福正さんは、自らの活動を貫く言葉として「弱さでつながる」を挙げ、「すごい、かっこいいということでつながるのではなく、私にも弱さがある。皆さんも弱さや苦手なことを話してもらい、一緒に考え、一緒に歩んでいけたらうれしい」と締めくくった。














