今こそ憲法を活かそう 平和を実現するキリスト者ネット全国集会 2012年10月6日

 平和を実現するキリスト者ネット(鈴木伶子事務局代表)は「今こそ憲法を活かそう――平和を実現するために」と題する全国集会を9月14~15日、カトリック幼きイエス会ニコラ・バレ修道院(東京都千代田区)で開催した。

「権力に利用されてはならない」内藤新吾氏

 内藤新吾(日本福音ルーテル教会稔台教会牧師)、西川重則(日本キリスト改革派教会東京教会会員、靖国神社国営化反対福音主義キリスト者の集い代表)、神谷武宏(沖縄バプテスト連盟普天間教会牧師)、木村葉子(ウェスレアン・ホーリネス教団浜松ウェスレアン教会伝道師)、門間幸枝(カトリック清瀬教会会員、無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会副代表)の各氏がそれぞれ、「原子力発電、差別構造、いのち」「憲法改定、思想・信教の自由」「基地、沖縄」「教育、日の丸・君が代」「死刑、冤罪」のテーマで発言。

 参加者はテーマごとに五つのグループで分科会を行い、今後の活動について協議した。また、渡辺治氏(一橋大学名誉教授)を講師に迎え、「大連立政権の下、改憲にいかに立ち向うか」をテーマとする公開講演会も開催した。

 開会の挨拶で鈴木氏は、「憲法を守るということは、キリスト者の使命と重なると思っている」「平和を作り出すこと、小さないのち、苦しんでいる人たちすべてが神に創られ、かけがえのない者として生かされているということ、そして絶対者である神の前にすべての人が等しいということ、それが憲法の中でうたわれている」と述べ、集会を通して現実を見つめ、キリスト者に何が求められているか探ることを課題として掲げた。

 原子力問題について発言した内藤氏は、低線量内部被曝の問題に触れ、その影響について学問が分かれていても、「いのちの問題」として、キリスト者はより大事を取るという考えに立つべきだと主張。また権力に利用されることがあってはならないとし、上に立つ者や機関が間違っている場合には不服従、むしろ抗議する務めがあると述べた。

 さらに聖書に基づいて、人間の尊厳と地球環境を守ることが神から命じられていること、「悪の軛を折る」働きに召されていること、社会構造の悪や国家の悪を糾弾することが預言者の働きであったように、教会もその働きに召されていることなどを強調し、事故がなくても微量の放射線が流れ出ている原発について、「今すぐ止めてほしい」と訴えた。

 西川氏は、改憲に関する審査のために各議院に設置された機関である憲法審査会について言及。自民党が4月に発表した日本国憲法改正草案の第百二条「全て国民は、この憲法を尊重しなければならない」を引用し、天皇を「元首」と明記した同草案が憲法審査会で認められた場合には徹底的に抵抗すると主張。「侵略を再び繰り返す可能性すら平然と認めるような、日本国憲法を改悪するというこの動向について絶対反対。そしてどういう理論で反対するのか、その論理の構築を学び合いたい」と語った。

「普天間問題から見える『差別』」神谷武宏氏

 沖縄の基地問題について発言した神谷氏は、9月9日に行われた「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会」に普天間教会として参加したことを報告。この日は日曜日であったが、信徒からの要望で礼拝の時間を早め、午前11時からの集会に参加した。同教会は毎年、県民大会や市民集会などに参加し、意思表示をしてきたという。

 その理由を「沖縄が平和ではないから」と語った神谷氏。「普天間問題から見える日本の問題とは、一言で言うならば『差別』」と述べ、「普天間問題は直接自分の生活に影響するものではない、何か雲の上の話と思っている人は意外に多いのではないか。そして沖縄を差別していること自体にも気づいていない人が多いのではないか」と問いかけた。

 元都立高校教諭の木村氏は、都立学校の管理が強化され、競争原理のもと、子どもたちとの自由な交流や教育の創意工夫が失われていること、「10・23通達」により国旗・国歌の強制が強化されていること、不起立の教員に対して思想変更を迫るような執拗な再発防止研修が行われていることなどを指摘。処分を受けたキリスト者教員の中には教会の中で孤立してしまう人もいるとし、ある教員の意見として「信徒の分裂、激減を恐れ、何もしない、何も考えようとしない、知識がない〝教会指導者〟がいるのではないか」と述べた。

 門間氏は、平安時代に死刑が廃止されていたことを指摘し、「日本は死刑廃止国だった。これは絶対に忘れてほしくない」と強調。元最高裁判所判事・団藤重光氏がこれを「日本の国民性」と述べていることを紹介し、「自覚しなければいけない」と語った。またある小学校での例として、子どもたちが死刑廃止、母親が死刑賛成の立場に分かれ、親子討論会が行われたことを紹介し、子どもたちが調査を重ね勉強した結果ディベートに勝ったことを「希望だ」と評価した。

 全体会では分科会での話し合いを踏まえ、今後の活動として、「わたしたちを取り巻く社会の問題の中で、イエス・キリストの生き方を学ぶ『聖書を読む会』を開催する」「各地で課題に取り組むため、参考資料や勉強会の講師などのリストを作る」「キリスト者として取り組むための理念を確立する」「歴史の学習が必要(神学校でも)」「日の丸・君が代の裁判支援をする。声明を出す」「死刑・冤罪に対し、キリスト者として『殺すなかれ』の声を上げる」といった提案が出された。事務局ではこれらを検討し、今後取り上げていく予定。

 同団体は1999年、国会で日米安保条約の新ガイドライン、周辺事態法、国旗・国歌法等が次々と成立する中、平和と信教の自由が侵される状況に危機感を持った日本キリスト教協議会(NCC)の呼びかけにより設立。現在34の教派・団体が加盟している。憲法の平和主義と思想信教の自由を守るための活動を行い、3年に1度、全国集会を開催している。

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