【地方からの挑戦~コレカラの信徒への手紙】 ♪とびら開けて 林 智之 2025年7月1日

ディズニー映画『アナと雪の女王』の劇中歌「とびら開けて」を聞いたことはあるでしょうか? 初めて会った2人が、会話をしていくうちに、心の距離が縮まり、その日のうちにプロポーズへと至る歌です。距離が縮まっていく様子がとっても素敵なメロディーに合わせて歌われます。
私は2022年4月に下松教会へ赴任しました。当時は新型コロナウイルス感染症のこともあり、不特定多数の出入りを制限せざるを得ず、教会の門は閉まっていました。新型コロナウイルス感染症が5類になって、私が最初にしたことは「扉を開ける」ことです。「え? そんなこと?」と思われるかもしれませんが、扉を開けて、人(信徒以外)が出入りするようになってよく言われました。「教会って、誰でも入っていいんですね」と。教会って、私たちが思っている以上に〝入りづらい場所〟なのだと気付かされました。
「扉を開ける」ためにまず準備したのは、み言葉おみくじ=写真=です。カトリックのキリスト教書店で、レジのところに置いてあるのを真似てみました。作るのはたいへんですが……幼稚園の子どもたちはもちろんのこと、通りすがりの人(?)が礼拝堂から帰る時に引いて帰られているようで、そんな時には神社のお賽銭のように献金が供えられています。
次にしたのは、礼拝以外で教会に来てもらうきっかけづくりです。礼拝堂を室内楽やジャズ、ゴスペルのコンサートやピアノ発表会の会場として使っていただきました。毎週水曜には地域のハーモニカ団体の練習が、土曜日には室内楽の練習が教会内で行われています。また幼稚園お迎えの保護者の方々の雨宿り場所や、小学生の宿題をする場所、卓球の練習場所としても平日は用いられています。
場所の提供だけでなく、食事を伴う交流の時間を多く持てるようにもしてみました。例えば、3大祝節の愛餐会だけではなく、お花見、春のバーベキュー、ミニバザーなどもしました。お花見では、私の趣味を生かして、茶道のお茶体験をしたり、バーベキューでは「酒にある交わり」もしてみました。食事の準備すべてを教会で行うのはたいへんなので、お弁当やサンドイッチの外注を多用しています。皆さんが食事をしながら楽しそうに交流している姿を見ますと、イエス様が折に触れて食事をしている描写が思い起こされ、イエス様がいかに人との交わりを大事にしていたかということを気付かされます。
さまざまなことを考え、実行してきましたが、1年目から人がすぐに集まったわけではありません。最初は扉を開けていても、もちろん誰も教会に入ることはありませんでした。食事の交わりも、最初は教会員だけのことがほとんどでしたが、少しずつ人が増えてきました。「扉を開け」て実感したことは、物理的に扉を開けても、心の扉が開いていくのには時間がかかるということでした。
そうして過ごした3年間。4年目に入り、今考えていることを残り2回の連載でお伝えできればと思います。
はやし・ともゆき 1993年大阪府生まれ。関西学院大学卒業。日本基督教団三原教会主任担任教師、社会福祉法人地の塩福祉会愛光園保育所チャプレン・同福祉会幼保連携型認定こども園愛光園副園長として4年を経て、現在日本基督教団下松教会主任担任教師・学校法人こひつじ学園下松幼稚園園長・日本基督教団徳山教会協力牧師。趣味は写真撮影や茶道、音楽など。ディズニーオタク。