石破首相 千鳥ヶ淵で献花 被爆80年式典で短歌と祈り引用 2025年8月27日

敗戦から80年を迎えた8月15日、石破茂首相は東京都千代田区の千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、献花と黙祷を行った。この日、戦後50年、60年、70年と発表されてきた歴代首相による「談話」が発表されることはなかったが、日本武道館で開かれた政府主催の全国戦没者追悼式では、式辞の中で「反省と教訓」に言及し、2012年の野田佳彦首相(当時)以来13年ぶりとして注目された。
首相は今年、8月6日の広島市、9日の長崎市で行われた平和記念式典にも出席。被爆80年の節目となる広島の式典では、あいさつの結びに歌人・正田篠枝の短歌「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」を引用した。この歌は、教師と児童が共に原爆で命を奪われた惨状を詠んだ一首で、平和記念公園内「原爆犠牲国民学校教師と子どもの碑」に刻まれているもの。首相はこの短歌を二度繰り返して読み上げ、「被爆の実相を風化させてはならない」と強調し、非核三原則を堅持する姿勢を表明した。
続く長崎の式典では、被爆医師で『長崎の鐘』を著した永井隆博士の言葉「ねがわくば、この浦上をして世界最後の原子野たらしめたまえ」を引用し、「唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向け国際社会をリードする」と誓った。
他方、被爆者団体が求めてきた核兵器禁止条約の締約国会議へのオブザーバー参加などをめぐって、これまでの慎重な政府の方針を覆すことはなかった。
写真=山名敏郎