【この世界の片隅から】 聖公会の東アジアにおける交流CCEA 松山健作 2025年10月1日

このたびは内輪ネタになって恐縮ではあるが、聖公会の東アジアにおける交流について取り扱いたい。聖公会には、CCEA(The Council of the Church of East Asia)という組織が存在する。日本語では「東アジア聖公会教会協議会」と訳されるが、英語表記には「聖公会」を表す言葉が含まれない。
CCEAは、非常に多様な組織体で地理的にはミャンマー、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、フィリピン、香港、マカオ、台湾、韓国、オーストラリアを含んでいる。人口的には300万人を越える。地域を見るだけでも民族的にも多様で、その背景にある宗教文化的背景もイスラム教、仏教などをはじめ多様であることが分かるだろう。またこの組織には、フィリピンのフィリピン独立教会(Philippine Independent Church)がフルコミュニオンの教会として加盟している。彼らは「Aglipayan Church」とも呼ばれる。
CCEAは近年、毎年の主教会とともに4年に一度の総会と、4年に一度の青年大会が企画されることになっている。主教制の教会として、主に主教たちの東アジアにおける交流に重きが置かれているとともに各地域が聖公会の教会として自立している21世紀において、青年たちの交流にも力が注がれている。
CCEAは2025年、東南アジア聖公会サバ教区が開催地となり、コタキナバルで主教会と青年大会が同時開催された。規模としては、青年大会が100人ほど、主教会が70人ほどであった。私はCCEAの常議員として、主に主教会に同行し、東アジアの聖公会の交わりに参加した。
聖公会という一教派は、読者の皆さんもよくご存じであろう。しかしながら、決して聖公会の教会といえども一枚岩ではなく、それぞれの地域においてそのチャーチマンシップが多様である。地域性や歴史性が重視されているといえば良いだろうか。
聖公会をキリスト教の辞典で調べてみると、時にハイ・チャーチ(高教会)、ロー・チャーチ(低教会)、ブロード・チャーチ(広教会)などの表記を目にしたことがあるかもしれない。けれども、今回訪問した東南アジア聖公会は、どちらかというとエヴァンジェリカル・チャーチ(福音派教会)に当たる。
礼拝は、もちろん祈祷書に則って聖餐式を行うわけであるが、必ず賛美と主教座聖堂などの規模のある教会ではダンスから始まる。日本聖公会の静かな礼拝を体験した方であれば、同じ教派の教会ではないように感じられるだろう。礼拝は、基本的に2時間ほどあり、聖餐中心というより、賛美とみ言葉、そして聖餐という形で典礼色はやや薄いのが特徴である。現地教会では、マレー語、中国語、英語の礼拝が主に行われている。
CCEAでは、毎年各地域の宣教報告がなされる。非常に興味深いのは、東アジアの教会においては、おおかたキリスト教人口が増加傾向にあるということである。しかし、オーストラリアや日本は減少傾向にあり、教区の再編や教会の合併といった課題を突きつけられている。いずれにしても東アジアという括りにおいては、勢いある状況という教会の状況があること自体が日本のキリスト教から見ると羨ましくも見えたりする。

開会礼拝での記念写真
さて、今大会のテーマは、「Focused and Faithful」であった。「Focused」とは、イエス・キリストにしっかりと目を向け続けること。「Faithful」とは、神が約束されたことを必ず成し遂げてくださると信じることに重きが置かれていた。
東アジアでは、さまざまな政治社会の状況において苦難と困難を経験している。ことに開会礼拝で説教を務められたミャンマー聖公会のスティーブン・タン首座主教は、内戦、大地震、洪水が起こり、苦難のうちにあるミャンマーの状況を話された。教会が厳しい状況にある中で、神から目を逸らさずに歩むことで、仮にホームレスになったとしても私たちには本当に帰るべき神の国(ホーム)という希望があることを忘れてはならないと力説された。
私自身、2024年能登半島地震以降、月に1回能登半島最北端の珠洲に寝泊まりをしながら現地の方々と過ごす時間を大切にしている。多くの方が家を失い、家族を失い、故郷を失い、公費解体が進み空き地だけが目立つようになってきている。ミャンマーの状況は、日本の被災地のそれとは違えども、困難な中で希望を見出していく大切さを教えていただいたような気がした。その他のセッションにおいてもミャンマーについての状況をお聞きし、主教たちが祈りを共にする場面が多く見られた。引き続き、国を越えてミャンマーのためにお祈りしたいと思う。
そのほか、主日礼拝では現地教会の聖餐式にも参加した。私が訪問したのは、新たに開拓されている中華系の開拓教会であった。サバ教区の司祭によると、伝道対象はイスラム教からの改宗ではなく、無宗教の人々に対する伝道を大切にしながら歩んでいるということであった。開拓教会といえども、すでに会衆は90人を超え、日本の教会事情から見れば「大教会」になりつつあると感じながら礼拝をともにした次第である。
今後ともCCEAが東アジアにおける交わりと情報交換を行い、東アジアにおけるキリスト教の連帯を生む組織として歩むことを願っている。
松山健作
まつやま・けんさく 1985年、大阪府生まれ。関西学院大学神学部卒、同大学院博士前期課程、韓国延世大学神学科博士課程、ウイリアムス神学館修了(神学博士)。現在、日本聖公会京都教区司祭、金沢聖ヨハネ教会牧師、聖ヨハネこども園園長、『キリスト教文化』(かんよう出版)編集長、明治学院大学教養教育センター付属研究員など。