【聖書普及150年】 〝神の言葉が分断を超える〟 聖書協会世界連盟 ダーク・ギバース総主事インタビュー 日本の教会に託す希望 2025年10月21日

 本紙は、式典に出席するため初めて来日した聖書協会世界連盟(UBS)総主事のダーク・ギバース氏に、後日改めてインタビューを行った。

――記念式典についてどのような印象を持たれましたか?

 とても素晴らしい礼拝でした。教会との関係における日本聖書協会の意義や、さまざまな教派の代表による表現の多彩さを、レセプションを通しても深く感じることができました。日本聖書協会が日本のすべての教会と強い関係を築き、常にエキュメニカルな存在であることが明確に示されていました。教派を超えたアプローチを通して、すべての教会が必要な聖書を受け取れるようにするという姿勢は、私たちUBSが常に目指しているものです。

 もう一つ非常に意義深かったのは、アジアの聖書協会だけでなく、アメリカ、スコットランド、イギリスなど、海外の聖書協会からも多くの方々が出席してくださったことです。これらの聖書協会は、日本における聖書普及の始まりに大きく貢献し、それが日本聖書協会の設立へとつながりました。スコットランド聖書協会を代表してスピーチしたエレイン・ダンカン氏は、UBS世界議会の議長でもあります。他の聖書協会を代表して、世界中で150周年の喜びを分かち合うことができたような気分です。

――キリスト者人口が1%未満といわれている日本において、150年間聖書が配布され続けていることを、世界的な視点からどう評価されますか?

 キリスト者が少数派である社会で150年もの間、聖書が広く配布され続けてきたということ自体が、聖書の重要性や価値、影響力が数に依存しないことを示しています。聖書の価値と力は、むしろ神の言葉を通して個人が神と出会い、また共同体として神の言葉を聞く中で体験されるものです。キリスト教人口が1%であっても80%であっても、その意味は変わりません。なぜなら、私たちが神の言葉を通して神と出会い、神が神の言葉と聖書を通して私たちと出会うという驚くべき真実があるからです。

 日本の場合、聖書を購入したり受け取ったりする人々の中にキリスト者ではない人もいるということが、この事実を証明しています。真理を求める人々が確実にいるということです。聖書は彼らを助け、信仰の道を示し、キリストへと導いてきたかもしれません。どんな文脈であれ聖書普及の歴史を語る時、教会抜きには語れません。私たちは150年の歴史の中で教会が果たしてきた役割を再認識する必要があると思います。

――UBSが直面する課題は何ですか?

 UBSは世界中のほぼすべての国に拠点を置いているため、グローバルな課題そのものを反映しています。例えば、ウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナの両方に聖書協会があります。こうした状況下で、どのように宣教の使命を維持するのか。神の言葉は、どのようにこの分断と戦争を乗り越えるのか。これが私たちの課題です。

 また、移民の現実もあります。国外に避難した人々に聖書をどのように届けるか。そしてもう一つは、気候変動と被造物の保護です。聖書が語る「被造物を管理する」という使命を、教会と協力してどう実践するか。これらの課題は相互に関連しており、例えば気候変動は移民の増加にも関係します。

 これはUBSに限ったことではありませんが、UBSがこれらの課題に取り組む独自の方法は、教会が聖書のメッセージをこれらの状況に反映できるよう支援することだと考えています。

――聖書がこれらの課題に対して重要な役割を果たすとお考えでしょうか?

 私は聖書に変革をもたらす力があると信じています。聖書の生きた言葉によって私たちの心と魂が新たにされる時、人生への向き合い方、他者への向き合い方に変化をもたらします。皮肉なことに、聖書は抑圧や迫害、虐待を正当化するために誤用されてきました。だからこそ、聖書が正しく理解されるように努めることが、より一層重要になるのです。聖書は強力な力を持っているからです。

――特定の教会に所属せず、日常的に聖書を読み、祈るようなキリスト者は世界的にも増えていると思われます。既存の教会には何が必要だと思われますか?

 鍵となるのは、教会がどれだけ開かれ、柔軟に、多様な道を通って来る人々を受け入れられるかです。そうした人々が持つ問いにどう向き合い、聖書と関われる場をどう提供するか。こうした人々の中から新しい形の教会が生まれてくる可能性もあります。実際、伝統的な教会を通さずにキリスト教が広がっている地域は他にもあります。ヨーロッパやアメリカの一部、主にイギリスでは、若い世代が自ら教会に戻りつつあり、その多くは意味を探し求める中で聖書と出会ったことがきっかけです。豊かな社会では、若者が「お金や快楽では人生の意味は得られない」と気づき、より深いものを求めているのです。

――高齢化と教勢の低迷によって自信を失いかけている日本の読者にメッセージをお願いします。

 今回が初めての来日でしたが、短い滞在の中で、日本の皆さんの中にある美しさを感じました。皆さん自身が気づいていないかもしれない神の美しさです。主のみ姿を皆さんのうちに見ました。かつて神があなたがたを通して働かれたように、今も神はあなたがたと共におられ、あなたがたのうちに生きておられます。主の美しさをあなたがたを通して輝かせてください。そして、神があなたがたに与えた特別な使命は、日本のためだけでなく、世界の他の地にも及んでいることを覚えてください。

――ありがとうございました。(聞き手・松谷信司)

Dirk Gevers 聖書協会世界連盟総主事。南アフリカ聖書協会で15年間奉職し、うち8年間は総主事を務めた。これまで地域・国家レベルで多様な教会の指導的役職を歴任し、同連盟では副議長、執行委員会委員長、連帯基金監督委員会委員長としても従事。多文化・多教派の現場で培われた国際経験と神学的洞察を生かし、すべての人に聖書を届けることに情熱を注ぐ。

【聖書普及150年】 翻訳と協働の歩み祝う 聖書協会世界連盟総主事ら来日 2025年10月21日

特集一覧ページへ

特集の最新記事一覧

  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘