「信仰継承」の再考と主体的信仰の回復を 森島豊氏が「宗教2世」問題で提言 2025年11月26日

 日本ホーリネス教団人権対策室・セクシャルハラスメント防止相談室は11月10日、東京聖書学院(東京都東村山市)を会場に、オンラインとのハイブリッドで公開研修会を開催し、森島豊氏(青山学院大学教授・宗教主任)が「宗教2世とクリスチャン家庭 」と題し、いわゆる「宗教2世」問題の本質と、教会が抱える課題をめぐって講演した。

 森島氏はまず、2018年ごろから使われ始めた「宗教2世」という言葉が、安倍晋三元首相銃撃事件以降、メディアで急速に広まった新しい概念であることを指摘した上で、社会学からの問題提起と教会内での捉え方、そして「宗教2世」の存在と「『宗教2世』問題」は区別されるべきと強調した。

 さらに、問題となるのは「カルト2世」だとし、「宗教2世」問題の核心は「子どもの主体性がどれほど保障されているか」にあり、伝統的なプロテスタント教会でも組織がカルト化して「考える力」を奪った際に生じる現象で、それは宗教に限らず、学校、家庭、職場などあらゆる関係性の中でも起こり得ると指摘した。

 「宗教2世」を語る際に用いられる「信仰継承」という用語が、実は1990年代後半から頻繁に使われるようになったことを日本基督教団が発行する「教団新報」から明らかにした森島氏は、その背景に、受洗者数が昇天者数を下回る95年以降の教会存続に対する危機感があったのではないかと分析。そもそも信仰とは財産や身分のように親から子へ「継承する」ものではなく、「聖書が証しする神との出会いの出来事(人格関係)によって与えられ、創造される恵み」ではないかと提起した。

 また、日本社会でカルト化が進む要因として、宗教・政治へのアレルギーと学ぶことを避ける風潮を挙げ、表層的な距離感は健全であっても、考えることを放棄すればいっそう支配されやすくなるとし、教会においても救済の根拠を問うことを許さず、主体的信仰(プロテスタント的要素)が失われることで、禁欲的倫理宗教(恩寵なき倫理)に陥る危険性があると警鐘を鳴らした。

 問題克服のための提言として森島氏は、子どもをコントロールしたいという誘惑に負けない教育、疑問を歓迎する教会文化、他教派との交流など、多様な学びの場を持つ必要性を挙げ、現代的なカテキズム(信仰問答)の再構築を提案。天地創造や十字架、復活、贖罪といった核心的テーマについて、若者や無神論者の問いを正面から受け止め、完璧な答えを求めずとも共に考える批判的思考が主体的な信仰を養うと強調した。

 質疑応答では、問答無用で「権威」に従わせる傾向があったことへの反省や、他教会への転会をめぐる現実的課題、当事者としての経験などについて議論が交わされた。森島氏は最後に、「愚かに見えるような空気を読まない問いこそが教会を成長させる」と述べ、問い続けることをやめない信仰形成のあり方を推奨した。

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