【映画短評】 『シンデレラ』の闇を暴く 『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』 2026年1月14日

『シンデレラ』の物語を義姉の視点で語り直す映画。義姉のエルヴィラはいじわるなのでなく、王子との結婚に妄執するひとりの少女に過ぎない。彼女が過度な美容整形に突き進むのは、母を困窮から救うためでもある。一方でのちにシンデレラとなる義妹アグネスは、実のところ貞淑とは無縁。憧れの王子にいたっては、女性を品定めの対象程度にしか思っていない〝クズ〟だ。
無害な童話だったはずの『シンデレラ』の闇が、そうやって暴かれる。美を追求し、ダンスや所作の訓練に明け暮れる少女たちは一様に「憧れの王子との結婚」や「有力者との結婚」を願うが、それ自体が搾取の構造に他ならない。富と権力を持つ男性たちは労せずして彼女たちを(その中の「上物」を)得ることができるが、彼女たちはそうしないと生きていけないからだ。人生を人質に取られてしまっている。
その結婚のため、エルヴィラは文字通りすべてをささげて美を追求する。その過剰さと痛々しさは美容整形の域をはるかに越え、もはやボディホラーに近い(見るに耐えない人体破壊シーンがあるので注意)。そこまでしたエルヴィラが迎える悲劇を自業自得と誰が言えるだろう。しかしそこで気づくのは、『シンデレラ』の物語でシンデレラが王子に選ばれ、義姉たちが破滅していく結末に溜飲を下げていた自分自身だ。
しかし、〝クズ〟な王子に選ばれたシンデレラは本当に幸せなのか。そして選ばれず惨めな姿になったエルヴィラは本当に不幸なのか。舞踏会にも王子にも一貫して興味を示さなかった、妹アルマが重要な役割を果たす結末を見てから、それを判断してほしい。
(ライター 河島文成)
1月16日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開。
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
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