【雑誌紹介】 平準化という日本の人権意識 『福音と世界』3月号

 特集「キリスト教と政治――政治神学の可能性をめぐって」。森島豊(青山学院大学総合文化政策学部教授・大学宗教主任)による「なぜ今、日本人は戦前の体制へ引き寄せられるのか?――ポピュリズムと『権利意識』の危うさ」。

 「本論考で明らかにしたのは、国民の認識した人権が、天皇の下での経済的・階級的平準化という国体に支えられていたという点である。そのため、天皇への忠誠心を欠く者は非国民とされ、他民族の権利擁護へと展開する原理とはならなかった。最終的には、皇祖皇宗を根拠として天皇をも相対化し、歯止めが失われていった。日本の国民が主体的に勝ち取った人権理念とはこのような道を辿ったのである」

 「さらに、この国民運動のシステムが、度重なる自然災害(スペイン風邪・関東大震災)による経済不況と戦争の中で稼働したことを銘記しておかなければならない。個人に責任のない不条理な出来事が続くと不満や自暴自棄になる思いが強くなる。近年の日本でも大震災、パンデミック、相次ぐ自然災害と経済不安の中で、同様の感情が観察される。日本人ファーストや外国人問題への若者の共感も同様の動きではないだろうか」

 「現在、その怒りと正義の根拠は天皇に結びついていない。しかし、『一億総懺悔』、『一億総中流』、『一億総活躍社会』という標語に見られるように、平準化という日本の人権意識は戦後も継続している。その根拠に天皇との繋がりは見えにくいが、近年は被災地への慰問等により皇室の人気と存在感は高まり、左派の護憲派も憲法問題では皇室により頼む傾向がある。天皇を敬愛することや国を誇りに思うことに悪意はないだろう。しかし、その思いが強いほど、災禍において過激な行動を引き起こす構造がこの国の国民形成に潜んでいることを見落としてはならない。さらに言えば、キリスト者であっても、この構造を相対化できなかった過去があり、現在においてもこの動きに疑問を抱けないキリスト者が存在するという事実から目を背けることはできない」

【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】

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