【書評】 『ハンセン病療養所に生きた女たち』 福西 征子

差別と隔離の中でなお虐げられてきた「最も小さき」者たちの声なき声

 

 全国四つの療養所で医師や所長として勤務した著者。園内では自治会、全患協(全国国立らい療養所患者協議会)の役員とも男性で占められ、表立って活動するのはいつも男性。話し合いの場でも女性が発言することはほとんどない。そのような実情を目の当たりにして、世間から隔絶された療養所で女性たちがどのように生きてきたかをつまびらかにした貴重な書。国立療養所松丘保養園(青森県)で現在も生活を続ける5人に聞き取りをしてまとめた。
 彼女たちは「女性は出しゃばらず陰で男性に尽くせばいい」と思われている風潮をどうにもできなかったと口を揃える。著者は、明治民法下で生活をしてきた1945年ごろに青年期を迎えた男性入所者が、社会から隔離され新しい思想の入らない園内で男性優位の考えを払拭させることはなかっただろうと推察する。
 また、女性たちは園内の教育レベルの低さも指摘する。ある女性は普通の人の話が理解できないこともあったと語る。彼女たちの不利な立場は不十分な教育によって後押しされた。
 患者自治会が発足する1946年までは親方制度が存続。結婚は親方(寮長)が決めた相手としなくてはならず、拒否することは難しく、よほどのことがない限り離婚もできなかったとの記述には衝撃を受ける。
 ある女性は「社会性はもとより心と頭も十分に成長しないまま大人になったため、結婚自体がどういうことか解らない人が多い。園内の結婚は本当の結婚ではないと思う」と語る。
 「らい予防法廃止によって特に変化は無かった」との言葉に、いかに彼女たちが希望も自我も持てず、ひっそりと生きてきたかがうかがえる。差別の対象だった中のさらに小さな人たちに光を当てた本書。イエスが最も小さき人たちと常に共におられることを願わずにはいられない。

【本体2,200円+税】
【昭和堂】978-4-81221-554-8

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