【雑誌紹介】 言葉の奥に耳を澄まして 『福音と世界』(4月号)

時評「『乗っ取られる』ボンヘッファー――アメリカにおけるボンヘッファー受容をめぐって」。昨年日本で公開された映画『ボンヘッファー ヒトラーを暗殺しようとした牧師』について、島田由紀(青山学院大学宗教主任・教授)が「アメリカで広がる安直で危険なボンヘッファー像の切り取りを端的に知らしめた」と述べる。
「映画は確かに、彼自身の著作や彼を知る人々が描いたボンヘッファーから逸脱している。ドイツの国家と教会が排外主義と自己偶像化に傾斜していくなかでキリストの教会の『今ここで』の言葉を求め続けたボンヘッファーの献身や国際性は、誇張されて描かれる米黒人教会の人々とのエピソードによって、あいまいにされる。真摯に平和を求めた彼自身のたどった深い懊悩の代わりに描かれるのは、自身の正義をやすやすと確信する人物である」
「映画公開は二〇二四年一一月、アメリカ大統領選挙の直後だったが、一〇月には米独の有力なボンヘッファー研究者らとボンヘッファー家の子孫らがそれぞれに、映画について深い憂慮を表明した。研究者らの共同声明は『正義のためにあなたはどこまで立ち上がって行けるか』という扇動的な広告の言葉を批判し、ボンヘッファーはクーデターを支持したがそれをキリスト教的・神学的に正当化することは拒んだとして、分断された政治的状況下でボンヘッファーを範として暴力を喚起することに強く反対した。ボンヘッファーの兄弟姉妹の子孫ら九〇名近くによる公開書簡も『独裁への闘いが今始まる』という宣伝文句を批判し、映画が歴史を歪めてボンヘッファーを『福音派の聖人』に改変している、とした」
「地下抵抗組織への参与という最大の決断について明示的な言葉を残すことのなかった、断片的で多層的なボンヘッファー自身の言葉の奥に、粘り強く耳を澄まし続けなければならない」
朝岡勝(日本同盟基督教団多磨教会牧師)が初めて責任編集を担う特集「フィールドで思考する――教会で、日本で、世界で」では、石原知弘「村の牧師の神学」、山口光仕「伊東における教会公共性の形成」など六つの論考が並ぶ。
【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】














