【「親なきあと」をともに生きる~お寺と教会の〈語らい〉から始まる支援】 解決がゴールではない 鵜飼亜由美 2026年8月11日

「ここに来るのが楽しみ」「ここなら何でも話せる。座っているだけで安心」――集まった人の表情が自然と穏やかになります。ゆっくりとした和やかな時間が流れている場所が、京都・城興寺の「親あるあいだの語らいカフェ」です。
どこに住んでいて、何をしている人か? どんな環境で、どんな障害や病気を持っているのか? 知らない人同士でも分かり合えて、来ているうちに顔見知りになり、良い関係性ができ、大切な場所になっていく。私も3カ月に1回の開催日に看護師として参加し、「ふぁみりーあったか保健室」を開催しています。体のこと、病気のこと、家族のこと、将来のことなど、話は尽きることがありません。
訪問看護の仕事をしていますが、誰もが何らかの悩みや不安を抱えています。自ら発信できる方はいいのですが、中にはどこに相談すればよいのか、私のこんな個人的な話は誰にもできない……と、一人で抱え込んでいる方もおられます。「体や病気のことが心配で」と話をうかがっていると、本当は家族のことや子どものこと、経済的なことが心配で悩んでいたりもします。

京都・城興寺で行われている「親あるあいだの語らいカフェ」
一人でいろいろなことを抱えていると、健康な人でも心身に悪影響を与えかねません。なぜこんな病気になってしまったのか? 私だけどうしてこんな目にあうのか? などいくら考えても解決できない問題もあります。
しかし、誰かに話をする、今の思いを伝えるだけでも気持ちは楽になります。そこにアドバイスや助言は必ずしも必要なく、ただ話を聴いて(傾聴して)もらうだけでいいのです。
話をする場所(環境)や話す相手は、心理的安全性を考慮する必要があります。自分が思っていることを声に出して話す、自分の話を自分の耳で聞くことで、本当は自分はどうしたいのかを考えることができ、自ら一歩前進できるきっかけになります。そんな心理的安全性が確保された、誰もが安心して集える場所が「語らいカフェ」です。
制度や専門職性があっても、心配事や不安、孤独が解決しないことは、本当にたくさんあります。解決することがゴールではなく、少しでも不安や孤独感が軽減する。自分は一人ではないと安心できる。分かってもらえる。そばにいてくれる人がいる。話を聴いてくれる人がいる。そんな場所があることをもっと当事者、介護者、医療・介護の専門職、行政関係者そして老若男女に広く知ってもらいたいです。
医療・介護・福祉の関係者は、何か支援(助けること)をしてあげないといけないと考えがちです。当事者や介護者としっかり向き合い、話を聴く・思いを聴くことによって、支援につなげなくてもご自身で解決できることが少なくないと思います。これからどうなるのか、どうすればいいのかが分からないと、人は不安になります。この先に起こるかもしれないことに対しての対応方法を知っていれば、不安は緩和されます。
誰もが不安を緩和し、今をそして未来を自分らしく生きていけるような社会にするためにも、この「語らいカフェ」がさらに全国に拡大し、一人でも多くの方の集いの場所になることを願っています。
うかい・あゆみ 訪問看護ステーション仁(京都市山科区)所長。1993年から急性期病院や開業医などで看護師として働き、2016年から訪問看護を始めた。21年からは日本在宅医療連合学会評議員を務めている。
*問い合わせは同相談室(https://otera-oyanaki.com/)まで。
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