【「親なきあと」をともに生きる~お寺と教会の〈語らい〉から始まる支援】 「私、こんなに疲れていたんですね」――語らいカフェの小さな保健室 時任春江 2026年9月1日

 2022年の春、京都の看護師仲間である鵜飼亜由美さんから1本の連絡をいただきました。「『親あるあいだの語らいカフェ』で、一緒に『保健室』をしてもらえませんか?」

 当時、私たちは看護師のボランティア団体「OneNurse」として、地域で「ふぁみりーあったか保健室」の活動を始めたばかりでした。こうして京都・城興寺で開催された「親あるあいだの語らいカフェ」に参加したことが、私とこの活動との最初のご縁でした。

 初回のその日、80代の女性が「私がいなくなったあと、この子は大丈夫でしょうか」と静かに話してくださいました。親が子を思う気持ちは、子どもが何歳になっても変わらない。その言葉に触れ、「親なきあと」は制度だけでは語れない、一人ひとりの人生の問題なのだと感じました。

 語らいカフェで初めて、障がいのある子やひきこもりの子を育てる家族とゆっくり向き合う機会をいただきました。そこには、不安や孤独を抱えながらも、懸命に日々を過ごす親の姿がありました。

 その後、この健康支援の取り組みをご縁に、愛知県岡崎市の本光寺で開催されている「親あるあいだの語らいカフェ」にも、第1回から仲間の岡田照代さん・田中美穂さんと共に参加しています。

愛知県岡崎市の「親あるあいだの語らいカフェ」で保健室活動をする筆者(左から2人目)

 本光寺では、当事者家族をはじめ、行政や社会福祉協議会、地域包括支援センターなど、多くの方が一つの輪になって語り合います。悩みがすぐに解決するわけではありませんが、経験を分かち合い、新しい情報を持ち帰ることで、「またがんばってみよう」と思える力が生まれているように感じます。

 私たちは看護師として、その場にある意見の一つとして医療の視点をお伝えしています。進級や進学、卒業後の進路など、子どもたちを取り巻く環境は毎年変わります。そのたびに、親は子が安心して過ごせるよう、学校や支援者へ丁寧に思いを伝え続けています。「親あるあいだに、この子を理解してくれる人を一人でも増やしたい」という願いは、多くの方に共通しているように思います。

 そのようなお話をうかがいながら、「進級進学など環境が変わっても、継続して関われる訪問看護という選択肢もあります」とお伝えすることがあります。看護師は医療だけでなく、生活全体を見つめる専門職です。本人だけでなく、家族を含めて支える視点が、安心につながればと願っています。

 語らいの前後には、保健室で血圧や酸素飽和度、指先によるストレス測定を行っています。「私、こんなに疲れていたんですね」と驚く方も少なくありません。皆さんは子どものことを最優先に考え、自身の健康は後回しになりがちです。

 私は、親が元気で笑顔でいることも、「親あるあいだ」の大切な支援だと思っています。親の笑顔は、子の安心につながります。だからこそ、この保健室は健康を測るだけでなく、「あなた自身も大切にしてください」と伝える場所でありたいと願っています。

 お寺や教会には、不安や弱音を安心して話せる空気があります。そこへ医療や福祉、行政、地域の人々が自然に集い、それぞれの立場で寄り添う。その積み重ねが、「親なきあと」を支える土台になっていくのではないでしょうか。

 これからも看護師として、家族の健康を支えながら、この温かなつながりを育むお手伝いを続けていきたいと思います。

 ときとう・はるえ 看護師。一般社団法人日本疲労メンテナンス協会代表理事。25年以上の臨床経験を生かし、企業や地域で心身の健康づくりに取り組む。看護師ボランティア団体「OneNurse」の仲間と共に、「親あるあいだの語らいカフェ」で保健室活動を続けている。

*問い合わせは同相談室(https://otera-oyanaki.com/)まで。

【「親なきあと」をともに生きる~お寺と教会の〈語らい〉から始まる支援】 解決がゴールではない 鵜飼亜由美 2026年8月11日

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