バプテスト教会で民兵400人超の軍事修了式 ミャンマー・カチン州、宗教施設の軍事利用に抗議 2026年10月10日

ミャンマー北部カチン州モーニン郡区ナンムンで9月23日、国軍と協力関係にあるシャンニー民族軍(SNA)が、カチン・バプテスト教会の礼拝堂内で軍事訓練の修了式を開催した。参加した民兵は400人超で、100人以上の女性を含んでいたとされる。地元住民や米国在住のカチン系バプテスト指導者らは、礼拝施設を軍事目的に利用したことを宗教の自由への重大な侵害だとして抗議している。
地元メディア「カチン・ニュース・グループ」の情報を伝えた「バーマ・ニュース・インターナショナル」によると、SNAはナンムンにあるカトリック教会の敷地を地域司令部として使用し、隣接するカチン・バプテスト教会の敷地を軍事訓練に利用している。9月23日の式典は礼拝堂内で開かれ、訓練を終えた第6期の民兵約400人が参加した。
米国の「バーマ・リサーチ・インターナショナル(BRI)」は10月5日、現地事情を知る複数の情報源をもとに、式典中に民兵が礼拝堂内で飲酒し、踊ったとの情報も公表した。同研究所によると、式典はミャンマー国軍北部軍管区のアウン・ゾー・トウェイ少将の監督下で行われたという。ただし、SNAや国軍側はこれらの主張について公式に確認していない。
米国のカチン・アメリカン・バプテスト協会やカチン・バプテスト諸教会USAの指導者らは、教会堂を軍事訓練や式典に使用したことを強く非難。教会はカチン人にとって信仰だけでなく民族的アイデンティティーの中心でもあり、軍事利用は共同体全体への侮辱だと訴えた。「クリスチャン・ソリダリティー・ワールドワイド(CSW)」も、今回の事件をミャンマーで続く宗教施設への攻撃や占拠の一環と位置付けている。
ナンムンはインドージー湖周辺に位置し、カチン人とシャンニー系住民などが暮らす地域。2024年以降、カチン独立軍(KIA)と国軍、SNAの間で緊張が高まり、多くの住民が町を離れた。「バチカン・ニュース」によると、以前は約500世帯のキリスト者が暮らしていたが、現在ナンムンに残るキリスト教世帯は約80世帯にまで減少したとされる。
住民の避難後、宗教施設の軍事利用が進んだ。「バーマ・ニュース・インターナショナル」によると、2024年6月ごろからSNA部隊がカトリック、バプテスト双方の教会周辺に展開し、その後施設内部を利用するようになった。カトリックの聖ヨセフ教会でも旧聖堂が軍事拠点として使われ、新しい聖堂が捜索・略奪されたとの証言がある。
しかも、問題は9月23日の修了式だけでは終わっていない。9月28日には、ナンムン近郊にある国軍・SNAの共同拠点をKIAと同盟勢力が攻撃して制圧した。現地報道によれば、23日の修了式に参加したばかりの新兵の一部も戦闘に投入されていたという。国軍側はその後、周辺地域に空爆を行った。
10月5日には同じモーニン郡区インドージー地域のチャウンワ村で、礼拝中だったカチン・バプテスト教会が、自爆型ドローンによる攻撃を受けたとの現地報道もある。死傷者はいなかったものの、教会建物が損傷した。攻撃は国軍とSNAの共同部隊によるものだと地域の抵抗勢力側は主張しているが、独立した確認は取れていない。
ミャンマーでは2021年2月の軍事クーデター以降、国軍と民主派抵抗勢力、少数民族武装組織の戦闘が各地で続く。特にカチン州やチン州などキリスト者の多い少数民族地域では、教会や学校など宗教施設への攻撃や軍事利用が繰り返されてきた。
CSWが9月に公表した情勢報告によると、2021年のクーデターから2025年末までに、少なくとも343のキリスト教会・宗教施設が破壊または損傷したとBRIは集計している。また、2024、25年だけで宗教施設を標的とした空爆が少なくとも312件確認されたとする別の調査も紹介している。これらの数字はNGOによる集計であり、国連などによる統一的な確認値ではないが、宗教施設が紛争に巻き込まれている規模を示している。
今年に入ってからも、バプテスト牧師が国軍に殺害されたとする報告や、3人のバプテスト牧師がキリスト教式婚姻を執り行う資格を最高裁によって取り消された事例が報告されている。BRIはこれらを、ミャンマーにおけるキリスト教徒への宗教自由侵害の一環とみている。
一方、ミャンマー全体の戦況もなお流動的だ。ロイター通信によると、10月5日には西部ラカイン州で国軍による避難民キャンプへの空爆があり、少なくとも8人が死亡したと反政府勢力側が発表。1週間前にも別の空爆で多数の死者が出ていた。
また米国政府は9月、2021年のクーデター後としては最高位レベルとなる国軍側との直接協議を開始した。ロイター通信が10月8日報じたところでは、米国人拘束者の解放やオンライン詐欺拠点への対応に加え、レアアースなど鉱物資源へのアクセスも議題となっている。民主派や少数民族武装勢力との接触も続けているとされるが、国軍への国際的圧力が今後どう変化するか注目される。
ミャンマー司教協議会会長のチャールズ・ボー枢機卿は10月初旬、武力ではなく対話による解決を改めて呼び掛けた。「平和は弱さではない。対話は降伏ではない」と訴え、和解によってのみ国民に未来をもたらすことができると強調している。
















