【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『宗教学のエッセンス―宗教・呪術・科学―』 芦名定道

『宗教学のエッセンス―宗教・呪術・科学―』(北樹出版、1993年)
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 「本書の意図は『宗教』のエッセンスではなく、あくまで『宗教学』のエッセンスを示すことにある。もちろん、著者の密かな期待は、賢明な読者が本書を手掛かりにして、宗教が現代人提示する真理にまで思索を深める道を発見することではあるが。では、自分は宗教的でないという意識に縛られた現代人があえて宗教学を学ぶ意義はどこにあるのだろうか」

 現在、京都大学にてキリスト教学を講じる著者が、若き日に行った講義ノートから生まれた本書は、このように問いかけて、その意義を冒頭で答えている。まず、国際化時代に、民族や文化を規定する宗教について最低限の知識を持つことが国際人の基本的条件となること、次に、宗教が現代を批判するための素材を提供することである。すなわち、現代日本人が「自分の宗教性を批判的に意識化しえていない」ナイーブな宗教的メンタリティーに支配されていることを指摘している。25年前になされた、この意義と指摘はいまだ有効であると言わざるを得ない。

 第一部は「現代宗教学の展望」として、宗教現象のモデル、信仰と究極的関心、聖なるもの、象徴、神話と民族、深層構造、儀礼、コスモロジー、呪術、世俗化論など、宗教学の基本的課題を順次扱っていく。各章末には、ブックガイドとして学びを深めるための参考文献を掲載。

 第二部は「科学時代の宗教の意義―キリスト教思想史の観点から―」と題して、科学の発展と宗教の関係史を論じ、ガリレオ裁判、進化論を扱っている。「宗教と科学」という課題に切り込み、生命倫理から環境倫理までを射程におさめている。

 宗教学の全体を紹介した上で「専門家向けのオリジナルな研究成果をまとめた論文集ではなく、良質な諸研究の紹介である」全稿24講からなる本書の価値はいまだ色褪せない。宗教とテロの時代といわれる21世紀だからこそ再読したい1冊。

【本体2,400円+税】
【北樹出版】978-4893843241

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