【書評】 『悪と苦難の問題へのイエスの答え イエスと神義論』 本多峰子
神が造られた世界に、なぜ多くの苦しみや悲しみがあるのか――災害や事件・事故、病などに接するたびに、多くの信仰者が直面する問い。こうした問いに、イエスはどのような答えを示してくれるのだろうか。
組織神学の主要分野である「神義論」の行き詰まりを、新約聖書学の立場から、聖書のイエスに戻ることによって打開し、一つの神義論を提示することが本書の目的である。
苦難を過去の罪に対する神の罰だと考える応報思想をイエスは否定する。誰もが神への立ち返りを必要としており、神に赦され救われた人間が、今度は互いに赦しと救いを広めていくようになることが、神に倣う生き方だと本書は指摘する。
東日本大震災から7年。「悪と苦難の問題」を捉え直し、イエスの姿勢に倣った能動的な生き方へと一歩を踏み出すきっかけを与えてくれる1冊。
【本体3,600円+税】
【キリスト新聞社】978-4873957395