【書評】 『キリスト教と戦争』 「愛と平和」を説きつつ戦う論理 石川明人 著
「愛と平和」を説くキリスト教が、戦争を容認するのは矛盾ではないか。長く教会内外で語られてきた命題に、歴史的、実践的な検証を加えた労作。
日本の教会の大勢は「集団的自衛権」の行使に否定的。カトリック司教団などが出す声明にも「正当防衛」や「正戦論」への言及はない。だが、宗教改革の時代から今日に至るまで、プロテスタントの主流派は「純粋な絶対平和主義者でも非暴力主義者でもない」ことを明示してきた。
「暴力を肯定するにせよ否定するにせよ、各々の個人的な見解を、聖書のなかから恣意的に選んだ記述によって間接的に権威づけ」る誘惑には常に自覚的でありたい。
「宗教が戦争に関わっているということと、それが戦争の『原因』かどうかということとは、きちんと区別されねばならない」との主張にも深くうなづく。
【本体820円+税】
【中央公論新社】978-4-12-102360-5