【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『ウエストミンスター物語 異文化交流体験記』 鍋谷尭爾

『ウエストミンスター物語 異文化交流体験記』(神戸バイブルハウス、2007年)

 ウエストミンスター神学校といえば、ダラス神学校、フラー神学校とともに20世紀後半の日米福音派において指導的地位にあった神学機関である。文字通り世界中から多くの人々が留学した。著者もその一人であり、本書では、当時の米国の様子が等身大の目線で描かれている。

 本書を理解するために、簡単に米国の有名私大の歴史を振り返りたい。米国最古の教育機関は、合衆国大統領や州知事の輩出を目的とした神学校、のちのハーバード大学である(1636年創立)。牧師養成のみならず、人類の営みのすべてを神の栄光としてささげるという前提で、同大学は出発した。

 後に、このハーバード大学を信仰的・神学的に堕落したと批判して、会衆派が1701年、イェール大学を設立。さらに、このイェール大学が堕落したとして、長老派が1746年にプリンストン大学、1812年にプリンストン神学校を設置。続けて、この同神学校が堕落したということで、1929年、長老派と福音派を中心にウエストミンスター神学校が設立され、著者が登場する時代となる。

 1967年9月4日正午、ノルウェー船籍の貨物船ギムレトン号に乗って、横浜を離れ、カナダ・バンクーバーを経て、12日間の船旅ののち、著者は米国フィラデルフィアのウエストミンスター神学校へと到着するところから物語が始まる。著名な旧約聖書学者E.J.ヤングの弟子、神学者・鍋谷尭爾の出発であった。特別寄稿として、渡部信(日本聖書協会総主事)の「私の異文化体験」、また池長潤(前・カトリック大阪大司教区大司教)「私の留学体験」も収録されている。

 幕末以来、日本人の知性の型として「海外留学」がある。夏目漱石のように見聞し煩悶したものを、各自が持ち帰り実践した。安酸敏眞「欧米留学の原風景 福沢諭吉から鶴見俊輔へ」(知泉書館、2016)とあわせて、近代日本という「この国のかたち」を知るために再読したい1冊。

【本体1,500+税】
【ヨベル】978-4946565311

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