【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『エクソシストとの対話』 島村菜津

『エクソシストとの対話 』(講談社、2012年)

 日本におけるキリスト教のイメージといえば、まず「結婚式」が挙がるだろう。次に挙がるのはミッション系の教育機関、またはマザー・テレサに象徴されるような福祉活動かもしれない。しかし、教会とはあまり関係のないところで、密かに不動の人気を誇るイメージがある。それが「悪魔祓い」、いわゆるエクソシストである。

 本書『エクソシストとの対話』は、スローフードなどイタリア文化の紹介者として著名な島村菜津による、ヴァチカンの公式エクソシストを訪ねた取材記録だ。その鮮やかな筆致は高く評価され、1999年の小学館・21世紀国際ノンフィクション大賞で優秀賞を獲得。その後、加筆、文庫化された。

 「ピオ神父というのは、生前から数えきれないほどの病の癒しを行い、現在のイタリアで絶大な人気を誇るカプチン修道会の聖人である。そもそもその僧を有名にしたのは、十字架にかけられたキリストと同じ場所に傷ができるという聖痕現象だ。(中略)司祭になったばかりのカロル・ヴォイティワというポーランド青年が告解に訪れた。

 『あなたは教皇になるでしょう』と告げ、青年司祭を驚かせた。やがて、この司祭はクラクフ大司教となり、30年後、誰もが想像だにしなかった異例のポーランド人教皇、ヨハネ・パウロ二世となった。そうした評判は、南部プーリア州のガルガーノ半島にある灌木に囲まれた山村、サン・ジョヴァンニ・ロトンドに、忽然とピオ神父の一大聖地を出現させた。関西国際空港を手がけたレンツォ・ピアーの設計によるパードレ・ピオ教会は、空港と見紛うばかりの7千人を収容する現代建築で……」

 イタリア文化と切り離せないヴァチカン市国におけるエクソシストたちが、どのように現代社会の病理と向き合っているのかを、聖職者のみならず心理学者や市井の人々へのインタビューを織り交ぜて浮き彫りにする。

 ウィリアム・フリードキン監督(映画『エクソシスト』ワーナーブラザーズ、1973年)最新作『悪魔とアモート神父』の撮影が始まった。同作公開前までに、もう一度読んでおきたい。

【本体724円+税】
【講談社】978-4-06-277159-7

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