『秘跡神学総論』(新世社、2006年)
「前世紀の間ローマ・カトリック教会で生じた重要な神学論争の一つは秘跡神学に関するものであった。諸秘跡についての問題が再開されたこうした論争は教会の学問的、神学的生活にとどまらず、教会の実際的な典礼生活にも影響を及ぼした。第二ヴァチカン公会議以後、秘跡のすべての儀式が刷新され、その結果、世界中のカトリック教会における秘跡の儀式は極めて大きな変化を遂げた。この前世紀に秘跡神学と秘跡生活において全く革命的なアプローチが化鳥リック教会の中に生じたとさえ言う人々もいる。しかし、これは決して伝統が消えてしまったことを意味するものではない。何故なら多くの場合において、これらの変化はまさに、その伝統が再検討され、再活性化された結果によるものだから である」
多くのプロテスタント教会で、月に一度は開催される聖餐式。本書は、その意味と歴史的成立をローマ・カトリック神学の立場から解説している。一読すれば「秘跡=サクラメント」の意味のもつ深みと広がりが見えてくる。訳者は言う。
「原著が発行されたのは一九八八年であるから、発行後既に一六年が経っているが、現代カトリック秘跡神学の動向を踏まえたテキストとして、なお、新鮮な洞察に満ちている。
日本の司祭要請では秘跡論は必須単位であるにもかかわらず、出版されている日本語テキストはわずかである。(中略)決して秘跡神学の専門家ではないが、司祭養成における日本語テキストの僅少という現実を前にして敢えて非力を顧みず約出した。この翻訳が、秘跡神学を学ぶすべての人にとっていささかでも役に立つことがあれば幸甚である」
すなわち入門書として、教科書的なものとして司牧的意図から邦訳されたのが本書である。読後、全キリスト教会の共有する神学と実践を、カトリックの立場から歴史的・理論的に総覧要約したことに読者は気づき、自らのうちにエキュメニカルな視点が新しく起動していることを知るだろう。