【既刊再読 改めて読みたいこの1冊】 『キリスト教神学入門』 アリスター・E. マクグラス 著/神代真砂実 訳
『キリスト教神学入門』(教文館、2002年)
「スイスの神学者カール・バルトが、キリスト教神学を最高に美しい仕方で描き出している。彼によれば、キリスト教神学は、息を呑むような景色によって、私たちに畏れを抱かせるトスカナ地方やウンブリヤ地方の風景に似ているのである。そこでは、最も遠いところでさえ、くっきりと見える。けれどもバルトは、キリスト教神学の学びが与えてくれる興奮を強調するたくさんの神学者たちの一人でしかない。本書を書くに当たっての確信は、神学こそは、およそ人が学びたいと願いうるものの中で最も魅力的なものだということである。キリスト教が新たな拡大の段階に入っているとき、特に環太平洋地域において、そのような新たな拡大の段階に入っているとき、キリスト教神学を学ぶことは、現代の知的文化の中で重要な役割を果たすであろう」
印象的な序文に心躍らせてページをめくった読者も多いだろう。オクスフォード大学など世界中の大学、神学校で教鞭をとるアリスター・E.マクグラス博士による神学入門。本書は、同書の第三版に準拠した邦訳である。1993年の原著初版から25周年を迎えた2016年には第五版が出ている。英語圏で文字通りの「神学入門」として、教科書として幅広く読まれている。簡潔かつ適切にまとめられた用語集、インターネット上への参考リンクなど、興味関心に合わせて、さらなる学びへと足を進めることができるようにと様々なステップが散りばめられている。
「マクグラスは、敢えて自分の立場を押さえ、神学の基礎的な情報を幅広く紹介してくれています。これを基礎にして初めて、より個性的な神学書をひもとくことが出来るようになるのです(中略)神学の世界にはいろいろな領域があります。それらをバラバラな著者による、従って、いろいろな立場から書かれた書物でいきなり学ぶというのでは、混乱した情報を得るばかりで、全体の見通しを失ってしまいます」
訳者である組織神学者・神代真砂実氏(東京神学大学・教授)は「この訳が、日本の神学の発展に多少なりとも貢献出来れば、本当に幸いなことです」と語る。その価値と喜びは、多くの読者によって証されるだろう。たとえば京都大学のキリスト教学研究室では、大学院入試を考える学生には、原著最新版と本書を精読・比較した上で、基礎概念や訳語を把握し、研究の前提を整えるように勧められる。
邦訳から15年以上を経て、本書は、いま多くの日本人にとって「神学」という息を呑むような風景への入口となった。
【本体7,500円+税】
【教文館】978-4764272033