【書評】 『迷える社会と迷えるわたし――精神科医が考える平和、人権、キリスト教』 香山リカ
本誌創刊1周年の2010年夏に行われたセミナーで、「教会と癒し」と題し、精神科医として、また一個人として教会への期待を語った著者。すでに第3号の特集「牧師館からの〝SOS〞」にも対談者としてご登場いただいていたが、当時から「『あっち側』と思われることへの抵抗感」を口にしており、以来、折に触れて「なぜ洗礼を受けるまでに至らないか」の理由について縷々語ってきた。
もし受洗したとして、自身が「クリスチャンであること」と、「平和」や「人権」をめぐり積極的に活動・発言することとは関連付けるべきなのか否か。思いのほか、悩みは深い。
長く教会に通い、チャペルを有するキリスト教学校で教鞭をとりながらも、信仰にはいま一歩踏み込めず、しかし精神科医としての限界にも向き合い惑う誠実さに、「先に」受洗してしまった者として襟を正される。
他に、聖学院大学総合研究所、カトリック正義と平和協議会主催の講演と、キリスト教カウンセリングセンター理事長である賀来周一氏との対談も収録。迷える社会の中で、同じく「迷える」人々に贈る著者初のキリスト教本。
【本体1,600円+税】
【キリスト新聞社】978-4873957456