【書評】 『文語訳聖書を読む 名句と用例』 鈴木範久

格調の高さ、歯切れのよさから、日本語に強い影響を与えた文語訳聖書の聖句や名句が、文学をはじめ多岐にわたる作品にどのように用いられてきたかを紹介する本書。
第4章「文語訳聖書の名句と用例」を読めば、それだけで、文語訳聖書の言葉がいかに世の中に浸透しているか理屈抜きで分かる。
例えば、一昨年の『朝日新聞』朝刊にあったという「プレ金笛吹けど客増えず」の見出し(プレ金とはプレミアムフライデーのこと)。もちろん「笛吹きたれど汝ら踊らず」から来ている。小説なら、アンドレ・ジイド『狭き門』。いつかタイトルが『狭い門』になる日は来るだろうか、などと自由に考えながら、気軽に文語体の良さを鑑賞できる1冊だ。
【本体1,100円+税】
【筑摩書房】978-4480099112