【書評】 『ヴィオラ母さん――私を育てた破天荒な母・リョウコ』 ヤマザキマリ
交響楽団のヴィオラ奏者として生計を立てながら、幼子2人を「女手一つ」で育て上げた86歳になる規格外の母・リョウコ。その破天荒な生き様を、漫画家・ヤマザキマリが娘の視点から描く。
『テルマエ・ロマエ』『プリニウス』などの作品で、ユニークな発想と独自の世界観を創り上げた著者の背後には、奇抜すぎる母の教えがあった。その教えには、代々受け継がれたカトリック信者としての信仰も色濃く反映していることが分かる。
ミッションスクールに通っていた経験、自身の進みたい道を邁進し、世間体にとらわれず大胆に自由を謳歌する姿は親子で重なる。
他人と比べ、多様なあり方を縛ろうとする窮屈な日本の子育てに、パワフルなリョウコの造形描写とあふれんばかりのユーモアで一石を投じる。
【本体1,300円+税】
【文藝春秋】978-4163909622