【書評】 『キリシタンの海』 宮内図書

大村藩のはずれ、沖島の番所に赴任した佐竹市右衛門。ある日、キリシタンと思われる老女を捉えるが、藩は事件をもみ消そうとする。「沖島邪宗始末」
弾圧から逃れる人々の逃亡を助けて命を落としたキリシタンの父。父を失ったその息子は信仰から離れ、家族を悲しませた父を恨み続ける。しかし、徐々に自分がキリシタンの繋がりの中で生かされてきたことに気が付き……。「キリシタンの海」
「転び者」留蔵は、盗まれても届け出ることができないのをいいことに、盗んだ聖具をキリシタンに売り、金を得ている。留蔵の背後に、キリシタンと大村藩、長崎奉行所の微妙な力関係を見る。「盗人」
キリシタンの「したたかさ」や弾圧の実状を描き、潜伏キリシタンへの興味関心を呼び覚ます作品集。
【本体1,300円+税】
【文芸社】978-4-286-21778-9