【書評】 『これからの男の子たちへ:「男らしさ」から自由になるためのレッスン』 太田啓子

 弁護士としてさまざまな離婚やDV被害の相談に乗り、二児の母として子育てにも奮闘してきた著者が、性差別、性暴力を根本的に解決するための方策について、問題となる事例を挙げながら現役親世代にも伝わる言葉でまとめた話題の本。

 「男子はバカだからね~」で容認してしまっている「『おバカ男子』言説」、「有害な男らしさ」の呪縛、無自覚なハラスメント、学校制度に組み込まれた男性優位社会の価値観など、これまであまりに日常的すぎて意識できなかった事柄に改めて目を向けさせる。

 問題意識を共有する3人との対談も収録。小学校で「生と性の授業」を実践する星野俊樹さんは、男性の立場から「有害な男性性についての議論を通じて、男らしさの価値観が男性自身を生きづらくしているという認識は少しずつ浸透してきた」としつつ、「『男だってしんどいんだ』という部分だけを強調すると、性差別構造の中で特権をもつ側であることを免罪する方向に悪用されてしまうおそれもある。男性の生きづらさを入り口に、『こんな差別的な社会は男だってうんざりだ』という声になっていくためには、特権について考えさせる社会的公正教育とセットである必要がある」と指摘する。「特権を持つ側が行動すべき」「何もしないことは不正義への加担」というのが本書に貫かれた著者の思い。

 性教育のあり方については、キリスト教界でも長く議論、研究がなされてきたが、現実に起こるさまざまな差別や暴力にどこまで対処できてきたかは甚だ心もとない。まずは教会で、「特権を持つ側」がアクションを起こさなければ。

【本体1,600円+税】
【大月書店】978-4272350476

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