【雑誌紹介】 霊性は多数の場所で忽然と 『福音と世界』5月号
特集「スピリチュアリティ――社会との交渉」。「『霊性(スピリチュアリティ)は多数の場所で忽然と現れ出す。宗教生活とは近代的な世俗化論が断言したようには収縮も、混乱も、蒸発もするものではない。むしろ、脱統制されたポスト組織的な形態では、宗教生活のなかで多様な資源が利用されている。このことに善かれ悪しかれ伴ってくる結果を予言することは困難だ。しかし、だからこそ、それらに対する理解が求められているのである』(デイヴィッド・ライアン『ジーザス・イン・ディズニーランド』)。社会学者デイヴィッド・ライアンは、ディズニーランドを舞台にキリスト教の伝道集会が開催されるという今日的状況について、このように述べている。科学知や合理的価値観の普及、いわゆる世俗化の進展は、教会に代表される組織としての宗教の求心力を弱めたが、それは信仰心の消滅を意味しない。従来の制度や組織の枠を超えて、新たなメディアや消費市場とも難なく結びつきながら、個人によって選択され実践されるスピリチュアリティ。それが近代以後の新たな宗教性である。宗教も、スピリチュアルであることも、しばしば怪しまれ揶揄される日本社会では、ライアンの提起はいっそう重要な意味をもつだろう。人々が社会と渡り合うさいの資源としてのスピリチュアリティを、先入観を排して見つめねばならない。本特集では、そうした『社会との交渉』を中心にスピリチュアリティを考える。商業主義化し、ネオリベラルな社会を下支えすることもあれば、資本主義や環境破壊との対峙を促すこともあるかもしれない、まずはそうした両義的なありようを検討しよう。さらには一歩踏み込み、霊性に内在する危うくも神秘的な力を歴史から掘り起こしたい。それは交渉に留まらず、いわば社会そのものから離脱する別の生の契機なのかもしれない。その行く末の『予言』こそできないが、スピリチュアリティを問うことで、未来の想像可能性を押し広げることはできるはずなのだ」と編集者。
「宗教からスピリチュアリティへ』(島薗進)、「『スピリチュアル市場』の出現と展開――『世俗化』論を手がかりに」(橋迫瑞穂)、「メディア史のなかのスピリチュアリティ」(堀江宗正)、「『霊性』のアナキズム――鈴木大拙を引き継ぐために」(安藤礼二)など。
独立記事「神の約束の中に生きるための『ジェンダー正義』」(藤原佐和子)。
【660円(本体600円+税)】
【新教出版社】