【書評】 『やさしい聖書物語』 マイテ・ロッシュ 著、女子パウロ会 訳
聖書の主な物語を、ギュッと1冊にした絵本『やさしい聖書物語』が、女子パウロ会から刊行された。アダムとエバから預言者イザヤ、イエス・キリストから使徒パウロまで、たくさんの人をとおしてつながれてきた、神さまからわたしたちへの愛のメッセージが、美しい絵と優しい言葉で綴(つづ)られている。
表紙を開くとそこはもう聖書の世界。陰鬱(いんうつ)とした風景に「はじめに 神さまは 天と 地を 作られた」という言葉が示され、神さまの天地創造が始まる。その後、色彩豊かで、あたたかみのある絵によって、聖書の世界が広がっていく。どのページも美しく、まるで美術書のような絵本だ。
著者のマイテ・ロッシュは、フランスの絵本作家。心理学と美術の専門教育を受け、児童心理学者として10年働いた時期に、画家の活動も開始した。子どもに理解しやすい単純な言葉と、優しく美しい色彩で、内容を豊かに表現する。また、20年間カトリック教会でカテキスタとして奉仕し、子どもたちへの福音宣教のためにより良いツールの作成を追求している。同書の他にも、『クリスマスのうまごや』(女子パウロ会)、『アルファベットの本』(絵・文)、『はじめての一歩』(シリーズ12巻)など多数翻訳されている。
同書は、神さまの天地創造から始まり、ノアのはこぶね、アブラハム、イサク、ヤコブ、ヨセフの物語、出エジプト、サムエルやダビデ王たち、預言者たちといった旧約聖書の場面に続き、イエスの幼年物語・宣教・奇跡・受難と死・復活・昇天・聖霊降臨、初代教会の誕生と発展、使徒の宣教へと新約聖書のエピソードへと続いていく。
聖書を開いたことのない人でも、どこかで一度は耳にしたことのある話ばかりだが、同書では、それらがどのようにつながり、どんな人物を生み出したのかをしっかり伝え、聖書全体の概要がつかめるようになっている。「神さまは ご自分の つくられた この せかいをごらんになって『いいね』と おっしゃった」など、馴染み深い言葉も使われている文章は、読みやすいだけでなく、聖書の物語をより一層身近に感じさせる。
さらに絵の中には、ちょっとしたかわいい秘密が隠されているので、それを探すのも楽しい。子どもだけでなく、まだ聖書になじみの薄い大人の方にもお勧めの絵本だ。ぜひ手に取って、この美しい絵本から神さまの愛のメッセージを受け取ってほしい。
【2,530円(本体2,300円+税)】
【女子パウロ会】978-4789608312