【書評】 『キリスト教で読み解く世界の映画』 関西学院大学キリスト教と文化研究センター 編

 本書は関西学院大学キリスト教と文化研究センターの研究プロジェクトであり、本格的なキリスト教専門家の視点による映画分析である。同センターの目的は、映画を通して様々に表現されるキリスト教を読み解くことで、キリスト教と現代文化、現代社会との関わりを解明すること。そのため、110の映画作品に対し、30人以上の「専門家」による本格的な批評、分析、考察がなされており、読み応え十分である。

 古典的作品から近年の作品まで、世界の映画を紹介しつつ、布教、礼賛から批判、風刺に至るまで幅広い内容を取り扱っている。何よりキリスト教擁護や、単なる信仰映画の紹介ではなく、映画を通して浮かび上がる清濁合わせたキリスト教の多様さを捉えていることに、本書の意義がある。

 「なぜ生きるのか?――この映画は人間同士が織りなす魂と魂の対話の限界性と可能性とを絶望と希望を織り交ぜながら、提示している、教誨室という空間を離れて、私たちが日常的に誰かと対話することの中で、苦悩し、落ち込みながらも、相手の心に空いた『穴』に寄り添い、その『穴』を通して共に抱く希望があることを示される」(『教誨師』2018年)

 「本作の最も残念なところは、黒人差別という複雑な問題が、キリスト教(善)vs 差別主義者(悪)という単純な二項対立的構図で描かれてしまっている点である。皮肉にも、キリスト教が率先して黒人差別を助長してきたという歴史的事実から目を背け続けていることを非常に分かりやすく表してくれている内容になっている」(『ウッドローン』2015年)。

 「ギブソン監督は、十字架刑に処せられたイエスの姿を上空からのカメラに切り替えて、あたかも神がイエスの死をご覧になっているかのように映し出した。そして、一粒の大きな水滴が地面の上に落ちて砕け散る。その映像表現には、監督者自身の信仰が表明されているように感じられる」(『パッション』、2004年)

 各ページの最後には、扱っているキリスト教のキーワードや、関連する聖書箇所も記載されている。これまで見たことのある作品も本書を読むことで、意外な点や驚くようなキリスト教との関連性に気づくだろう。読了後に改めて見る作品は、また異なった味わいがあるに違いない。

【1,980円(本体1,800円+税)】
【キリスト新聞社】978-4873958064

書籍一覧ページへ

  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘