【雑誌紹介】 「賛美の力」は後回し? 『礼拝と音楽』196号
特集「礼拝と時間」。「賛美の時の回復を求めて――営みの中における賛美」と題し、青山学院大学教授の山本美紀が「コロナ禍を経た音楽・賛美歌の聴取/演奏/歌唱傾向の変遷と実態調査」というアンケート(2022年6~7月実施、147人回答)の結果を紹介している。
「『コロナ禍前とコロナ禍の期間中で教会での賛美の時間や曲数に変化がありましたか』の質問について、約七割(72.5%)の回答者が変化があったと答え、三割は『変化が無かった』と答えています」
「このような礼拝の中での賛美歌に関する変化について『変化の理由を牧師などから聞きましたか』という問いには、約七割が『説明を受けている』(72%)、あるいは『聞かなかったが理由を理解している』(18%)と答える一方で、一割弱が『理解していない』(8%)とあり、この微妙な数値は賛美歌(会衆歌)の位置づけについての説明が、全会衆までには十分に行き渡っていないとも受け取れるものです」
「つまり、日本の教会は礼拝の中での賛美歌を歌うことに大きな揺さぶりを受けたにもかかわらず、それについて深く問い直して会衆に説明し、互いに賛美歌や賛美することへの考えを共有するということが、この時点で不十分であったことがうかがえます」
「音楽が人々の『慰め』や『癒やし』に応えていたのだとすれば、礼拝の中で失われていったこれら賛美の時間に代わる何らかの補填は為されていたのでしょうか。……これまでの教会史において体験的に獲得されてきた『賛美の力』を、この難しい局面でこそ生かそうとする策は後回しにされていなかったでしょうか?」
「私たちはパンデミックを経て、教会という共同体が『礼拝』だけで保たれているのではないこと、礼拝も共に賛美することも、人と人がつながるための祈りと配慮に満ちた多くのチャンネルを必要としているということを改めて知りました。つまり、私たちの共同体は礼拝や共に賛美することの周辺にある互いへの思いやりや祈りと共に、行動を伴うつながりに多く依っており、双方が恵まれなくてはいけないという、実は当たり前のことであっても、平時の日常では意識できていなかったことを私たちは学んだのだと言えます」
【1,500円(本体1,364円+税)】
【日本キリスト教団出版局】