【書評】 『あそびの生まれる時 「お客様」時代の地域活動コーディネーション』 西川 正

 地域社会で私たちはどう生きるのか。教育、福祉、地域活動、人と人とのつながりですら、等価交換によるサービスを与える側とそれを受ける「お客様」になっている現代社会。

 「あそび」という概念を切り口に、著者のNPO法人での活動、PTA会長や民生委員、地域図書館長としての経験から結果ではなく、過程そのものがみんなの喜びになっていく、そんな地域活動のあり方を模索し、紹介する。

 本書は前著『あそびの生まれる場所 「お客様」時代の公共マネージメント』に続き、コロナ禍を経た中でのさまざまな試みや、個人主義化する現代社会が忘れてしまっている人と共に生きることの価値を再考する。

 著者は社会学で使われる、人間関係の豊かさや、つながりの指標を示すソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が個人にあること、それが個人を通して地域に蓄積されていることの重要さを述べる。その上で「正しさ」が先行する地域活動ではなく「楽しさ」から始まる地域のつながりを提案する。

 「地域での活動は、正しさが先行しがちだ。たとえば、長年活動してきた『先輩』たちはよく『地域のことを地域の人が担うのは当たり前』と言う。PTAなどでは『子どものために親が働くのは当然』と。それぞれ長年地域の活動を担ってきた人々だからこそ、地域をだいじにしている。しかし、だからこそそれを『まだ動いていない』人に伝える時は十分に注意したい。『〜すべき』『〜するのが当たり前』と正しさを押し付けたら人々はどう受け止めるだろう……最初から正解のあるところで、決して遊び(やってみよう)は生まれない。また苦労のないところに楽しさは生まれない。ともに苦労し、工夫したその時間を振りかええった時に『おもしろかった』『よかった』となる。活動が広がるとは、そのおもしろいと感じる人の輪が広がることなのだ」(第2章「負担感の研究」)

 公助(行政が行う支援など)と共助(地域・市民レベルでの支援活動)についても、どちらかがどちらかを批判する、利用するだけではなく、どちらも必要であると述べる。

 「人のつながりと制度やしくみ、その両方があってはじめて人は、尊厳をもって、安心して生きていくことができる、共助の現場で生まれた人のつながりは、人をはげまし、やがて公助を変える力や公助の施策を後押しする力につながっていく。共助と公助が重なるところに公正で暮らしやすい社会が生まれてくるのではないだろうか」(第5章「自助、共助、公助」)

 いま改めて人と人とのつながり、地域のつながりの価値が再考される時代の中で、教会はどのような役割を持てるのか。教会もまた地域の中に存在し、個人同士が集まり、つながりが生まれる場所である。教会という建物が、教会内の人と人とのつながりやネットワークが、地域社会においてどう見られ、またどのような役割を担っているのか、担おうとしているのか。

【2,200円(本体2,000円+税)】
【ころから】978-4907239664

書籍一覧ページへ

  • 聖コレクション リアル神ゲーあります。「聖書で、遊ぼう。」聖書コレクション
  • 求人/募集/招聘